2014 Fiscal Year Research-status Report
確率過程のパラメータ推定におけるウェーブレット法: 時間-周波数局在化の優位性
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25400186
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
川崎 秀二 岩手大学, 人文社会科学部, 准教授 (10282922)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 時間-周波数局在性 / ウェーブレット / 相関解析 / M系列変調 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,前年度にある程度の成果が得られたウェーブレットの時間-周波数局在性に基づく時系列解析法の実証研究的な応用として,実データを伴う解析を行った.具体的には,地震予測のための海底面変位の測位データ時系列における,相関法による船上からの送信波と海底局からの返信波のタイムラグ検出をウェーブレット法で行った.観測波形は海洋ノイズを多く含み,従来の素朴な相関法ではあまり精確にタイムラグ検出ができない.これに対し,観測波形をウェーブレット変換したものについて,ウェーブレットの各スケールでの相関法をセットアップした.理論的な時間-周波数局在性に対応して,シフト変数(時間に対応)上およびスケール変数(周波数に対応)上での相関値ピークを,従来法より少し精確に検出できる事が視認できており,これはデータを提供した共同研究者からも同所見をいただいている.
手法としてはまだ荒削りな段階であるが,最初の取り組みとしては可能性を期待できる感触は得ることができたと考えている.今後はよりロバスト性を高め,またデータ採取の仕方を僅かに変えながら多数サンプル採取する事を盛り込んでタイムラグ検出精度を向上させる. 本成果は,2件の研究会において,招待講演として発表した(数学協働ワークショップ「ウェーブレット理論と工学への応用」2014.11., 大阪教育大学 ,東京都市大学調和解析研究会 2015.2, 東京都市大学).来場者からは,改善すべき点の指摘も含め,多数の関心を持っていただいたと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「確率過程のウェーブレット解析」について,ウェーブレット係数ドメインでの統計的推定および付随する極限定理定式化の理論的基盤を構築する事については,これまでに,キーとなるウェーブレット係数の局在性の定式化ができている.引き続き,その時間-周波数局在性を極限定理に結びつける定式化に取り組む段階へ展開していく. また,「使える」データ解析法としての確立を目指すという事については,今回実施した実データを伴う実証的応用研究により,理論で得られた時間ー周波数局在性を活かしたデータ解析法で従来法よりは少しパフォーマンスの良い手法になりそうとの感触を得ている.
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Strategy for Future Research Activity |
・今回実施した時間-周波数局在性の応用による時系列データ相関ピーク検出の鮮明化について,一定の成果の形とする(アプリケーションシステムとして構築する,論文化する等) ・時間-周波数局在性の理論解析について,これまでに得られた基本形に対し,対象の仮定を緩めてより一般的な議論へと展開する(ガウス過程である事や分散有限性の仮定を外す,長期記憶であるが自己相似でない過程を対象とする等); ウェーブレット係数でのパラメータ推定における非中心極限定理とそれに基づく仮設検定法の構築.
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Research Products
(3 results)