2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400188
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
和田 達明 茨城大学, 工学部, 准教授 (00240549)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 情報幾何学 / 一般化エントロピー / κエントロピー / ダイバージェンス / フィッシャー情報計量 / κ-統計力学 / 双対平坦 |
Research Abstract |
情報幾何学は指数型の確率分布族から構成した統計多様体上の微分幾何学として創られ、様々な分野において応用がなされ発展してきた。近年、一般化エントロピーに基づく統計力学の一般化に関する研究に端を発し、一般化エントロピーやその最適分布である一般化指数型分布族に対する関心が、統計力学、情報理論、統計学などの分野の研究者間で高まり、一般化指数型分布族のなかでも最もシンプルで基本的であるq-指数型分布族に対する情報幾何構造の研究がここ数年内に急速に発展してきた。本研究は、一般化指数型分布族のなかでも、q-指数型分布族とは異なるパラメータ拡張である、κ-指数型分布族に対する情報幾何構造の解明を主目的とした理論的研究である。この成功は、q-指数型分布族が情報幾何学において基本的であるα-表現との整合性が良く、α-表現を用いてq-指数型分布族に対して適切な統計多様体を構成できたからである。しかしながら、κ-指数型確率分布に対してこのα-表現を適用することでは適切な統計多様体を得ることはできず、研究を遂行する上での最初の問題点であった。 初年度の成果として、α表現の概念をより広いクラスへ一般化したZhangによる共役表現に基づいて、試行錯誤の後にκ-指数型確率分布に対する適切な共役表現を求めることができた。 κ-統計力学における熱力学的ポテンシャル関数に対するルジャンドル構造と、情報幾何におけるポテンシャル関数に対するルジャンドル構造との整合性を調べることで得ることができた。 また、通常のエントロピーと多項係数との間に成り立つ関係を、κ-変形に関する新たな代数演算を導入することで、κ-エントロピと多項係数との関連付けられることを示した(Entropy誌掲載論文参照)。 これらの結果をまとめ、平成26年度に開催される国際ワークショップにて発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究当初に予想したように、α表現の概念を一般化したZhangによる共役表現を導入することで、より広いクラスの確率分布族に対して統計多様体が構成できると考え、κ-統計力学および情報幾何学におけるルジャンドル構造に基づいた試行錯誤を経て、κ-指数型確率分布族に適合する適切な共役表現を見い出すことができた。 また、この適切な共役表現におけるルジャンドル構造と、κ-統計力学における熱力学的ポテンシャル関数の間に成立するルジャンドル構造との関連についての知見を得ることもできた。更に、得られたκ-指数型確率分布族に対する適切な共役表現を用いて構成した統計多様体に対して、その情報幾何構造も明らかになりつつある。これらの研究成果の一部を論文として既に投稿済みである。 また、情報幾何構造とは直接は関連しないが、κ-統計力学における変形指数関数に基づいた変形代数を導入することで多項係数を一般化し、κ-エントロピと多項係数との関連付けを示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
κ-統計力学における漸近的ベキ型確率分布であるκ-指数型分布族に対する適切な共役表現が得られたので、これを利用して構成した統計多様体に対して、κ-統計力学における熱力学的ポテンシャル関数のルジャンドル構造に基づき、対応するフィッシャー情報計量、幾何的ダイバージェンスなどの情報幾何構造を明らかにしていく。物理サイドからは、情報幾何において非常に重要である双対平坦構造や拡張ピタゴラスの定理が、κ-統計力学においてどのような役割を果たしているのかについても調べていく予定である。 また、既に分かっているq-指数型分布族に対する統計多様体上の情報幾何構造と比較することにより、類似点、相違点を明らかにし、κ-指数型分布族の特徴を探っていく。特に、κ-指数型分布族に対するエスコート分布族に関するルジャンドル構造や情報幾何構造を調べていく。そのために、情報幾何学やアファイン微分幾何学に精通している専門家からの知識の提供を受けたり、この分野の専門家との議論を積極的に行っていく。 また、情報幾何学サイドからのアプローチと平行して、ワッサースタイン幾何と情報幾何についての関連に基づき研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた国際会議への参加ができずに、その分の旅費が使用できなかった。 また、アルバイトが確保できなかった等の理由のため、謝金について当初予定どおりには使用できなかった。 当初の予定どおり、国内外のそれぞれの分野の専門家と直接議論したり情報交換のための外国旅費を中心に研究費を執行する予定である。具体的には7月にギリシャで開催される国際ワークショップに参加し、これまでに得られた成果を発表する予定である。この他にも広く国内外の関連研究会などに参加し、情報収集、研究打ち合わせなどを行っていく。 また、情報幾何学やアファイン微分幾何学の専門家から高度な専門的情報提供を受けるために謝金を利用していく。
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Research Products
(6 results)