2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400223
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂井 南美 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (70533553)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 智 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80182624)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電波天文学 / 惑星起源 / 星間分子 / 星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、最先端の電波天文観測により、太陽型原始星(低質量原始星)の形成現場における化学組成とその進化の解明に取り組んだ。IRAM 30 m望遠鏡、野辺山45 m望遠鏡などの単一口径電波望遠鏡を用いた原始星天体のスペクトル線サーベイでは、特にWCCC (Warm Carbon Chain Chemistry)天体L1527について、種々の炭素鎖分子が特異的に豊富に存在していることが明瞭に示され、原始星天体の化学的多様性の研究の重要性が改めて示された。この研究を発展させ、一つの分子雲複合体(ペルセウス座分子雲)に含まれる原始星の化学組成の統計的研究をIRAM 30 m望遠鏡および野辺山45 m望遠鏡を用いてスタートさせた。30個を超える原始星天体の化学組成を無バイアスに観測することで、化学的多様性を支配する物理的要因の解明を目指しており、初期成果が得られつつある。一方、並行して進めているALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array)による観測では、WCCC天体であるL1527で回転落下エンベロープの遠心力バリアの位置で化学組成が大きく変化していることを定量的に示した。遠心力バリアの内側では原始星円盤が形成されると考えられるので、原始星円盤に至る化学進化の最前線を捉えたと言える。これらの成果は、「我々が住む地球のこの素晴らしい環境が、宇宙の中でどのように生まれてきたか」という根源的問いかけに科学的に答える第一歩として、重要な学術的価値がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
IRAM 30 m電波望遠鏡による観測では、原始星天体の化学組成を系統的に調べる大型観測プログラムASAI (Astrochemical Survey at IRAM)をフランスチームと共同して立ち上げ、WCCC天体であるL1527のラインサーベイを推進した。炭素鎖分子が非常に豊富に存在していることを確認するとともに、炭素鎖分子の関連分子であるc-C3H2の13C同位体種やc-C3Hの重水素置換体の検出にも成功した。c-C3H2ではその12C/13C同位体比が炭素原子における存在比よりも大きくなっていること、2つの13C同位体種の12C/13C比が大きく異なることを見出した。この異常についての論文をとりまとめ、Astrophysical Journalに投稿中である。ALMAによる観測においては、L1527で検出した遠心力バリア近傍の温度、密度を推定するために、分子の統計平衡励起計算を行い、遠心力バリアの物理的性質を明らかにした。さらにその結果を用いて、CCH, c-C3H2, SO, CS, H2CO, CH3OHについて、遠心力バリアの内外で分布が異なることを定量的に示した。CCH, c-C3H2, CSは遠心力バリアの外側の回転落下エンベロープに存在し、SO, CH3OHは遠心力バリア付近に局在している。一方、H2COは全体に分布していることがわかった。このことは、遠心力バリアでの劇的化学変化の起源の理解に向けて重要な基礎を築いた。この成果については論文としてとりまとめ、Astrophysical Journal Lettersに出版した。このように、研究は当初計画通りに順調に進行しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、太陽型原始星の形成と進化、および、そこでの化学進化について、新しい知見が続々と得られつつある。現在進めている太陽型原始星天体の化学組成の多様性についての統計的研究についての成果を早急に出版するとともに、その成果をもとに国際共同大型干渉計ALMAの観測プロポーザルを提出する。また、太陽型原始星における遠心力バリアの普遍性とそこでの化学変化について、いくつかの原始星天体でALMAの観測データの解析を行い、論文として出版する。これらを通して、原始星から原始惑星系円盤に至る化学進化の道筋を描き出したい。
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Research Products
(6 results)