2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400247
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 哲男 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00252528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 宏次 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10313173)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クォーク・グルーオンプラズマ / クォーク・ハドロン相転移 / カイラル相転移 / 非閉じ込め転移 / 高エネルギー原子核衝突 |
Research Abstract |
1.クォーク・ハドロン相転移のPNJL模型による研究 代表研究者の松井は、高温におけるクォーク・ハドロン相転移のPNJL模型による研究を、大学院生を指導して行った。この模型は、カイラル相転移と非閉じ込め相転移を記述するQCDの有効理論として注目を集めているが、我々は熱的に励起された自由度のハドロンからクォークへの連続的な移行を記述する模型として注目し、これまで調べられていなかった熱力学的性質の転移領域における振る舞いをこの模型により計算した。その結果は、院生の山崎加奈子氏と共著で2つの論文としてNuclear Physics A誌上で発表し、山崎氏により国内の学会や、3つの国際会議(うち1つは国内)で報告された。山崎は、今年度から日本学術振興会のDC2奨励研究員に採用された。 2.高エネルギー陽子原子核衝突における重いクォーク対やその束縛状態の生成の研究 分担研究者の藤井は、高エネルギー陽子原子核衝突における重いクォーク対やその束縛状態の生成の研究を、松井の学生と行った。この研究では、グルーオン間の非線形相互作用を「カラーグラス凝縮体(CGC)」模型で取り込んで生成されるクォーコニウムや重いクォークを含むハドロンの対生成を計算し、藤井はNuclear Physics A誌上で院生の渡邉和宏氏と2つの論文として発表し、藤井によって国際会議ども報告された。この研究結果が発表された後にLHCの実験結果も発表され、実験家からもからも注目されている。渡邉はこの研究成果を学位論文にまとめ、東京大学大学院総合文化研究から学術博士の学位を受理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PNJL模型を用いたクォーク・ハドロン相転移の研究は非常に順調に進んでいる。とくに、ストレンジネスを入れた計算の拡張は、アノマリーの効果を小林・益川型の3体相互作用を取り入れて拡張を行ったが、山崎氏の努力でこの研究は比較的早く取りまとめることができた。また我々のこれまでの研究によって、有限密度への拡張でバリオンの効果を取り入れることの重要性がさらに明らかになってきた。 CGC模型を用いた高エネルギー陽子原子核衝突における重いクォーク対の生成の研究でも、LHCの実験結果が発表される前に研究成果を発表することができ、概ね順調に進展した。ただ、他の理論計算と比較してこの理論計算の予言は実験結果と多少食い違っており、その原因がどこにあるのかはまだ明らかになっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
PNJL模型の拡張として、バリオン相関を取り入れる計算をおこなう。その際、NJL模型に加えてダイクォーク相互作用を導入し、クォーク2体相関を介して3体のクォーク相関を取り入れる理論的手法を経路積分法を用いて定式化し数値計算を実行する。この一連の研究成果は、山崎の学位論文としてまとめる予定である。 CGC模型を用いた高エネルギー陽子原子核衝突における重いクォーク対の生成の研究では、束縛状態の生成に現象論的な蒸発模型を用いた。この方法では束縛状態の特性が考慮されていない。実験値との不一致を説明する方法として、束縛状態の情報を取り入れた計算を試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年(2013年)は参加予定の国際会議(New Frontiers in QCD 2014)の日程調整がつかず参加できなかった。また、昨年度に購入予定のコンピュータ等の備品の購入が予定より安価に済んだ。 今年度は、国際会議(日米物理学会合同ハワイ分科会等)や学会に積極的に出席して研究発表を行う。物品では計算機等の研究補助器具の大幅な更新を行う予定。また、まだ余裕がある場合は、共同研究者(イリノイ大学ベーム教授、サクレイ研究所ブレゾー博士等)を招聘し、国際共同研究の推進を行う。
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Research Products
(8 results)