2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400247
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松井 哲男 東京大学, 総合文化研究科, 教授 (00252528)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 宏次 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (10313173)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | クォーク・ハドロン相転移 / QCD相図 / 相対論的原子核衝突 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の松井は、大学院生(山崎)を指導して、クォーク・ハドロン相転移におけるハドロンからクォークへの自由度の変換を、クォーク相互作用の有効理論であるPolyakov-Nambu-Jona-Lasinio(PNJL)模型によって記述する研究を行った。今年度の研究では、昨年度の成果(自由度の変化に伴うエントロピーの変化の記述)の論文発表に加えて、これまでの研究で残されてた課題であるバリオンの記述について新しい成果を得た。山崎はこれらの一連の研究を学位論文にまとめ、東京大学より今年度3月に理学博士の学位を取得した。 また、もう一人の大学院生(D1)の田屋は、研究分担者の藤井等とパルス型の外部電場の下での荷電粒子(電子・陽電子)の対生成の計算結果を発表したが、この研究費の補助でハワイで行われた日米合同物理学会(原子核パート)で口頭発表した。藤井は、パートン飽和効果の検証観測量として、LHCエネルギーでの陽子原子核反応における重いクォーク生成、およびそのDメソン崩壊から生じる電子の分布を、カラーグラス凝縮モデルを用いた共同研究を昨年学位をとった渡邊(中国武漢大学研究員)とともに進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
有効理論を用いたクォーク・ハドロン相転移の研究についても、また高エネルギー原子核衝突の初期過程に関する研究も、今年度の目標はほぼ達成されたと考えている。前者の研究では、念願の課題であったバリオンの記述において新しい突破口が開かれたと考えている。後者の研究では、初期状態に現れる強い場の取り扱いにおいて新しい解析的な計算結果がでた。この結果は、これまでよく知られていた摂動領域と非摂動領域の解を内挿するものであり、荷電粒子の対生成の物理の理解を深めた。
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Strategy for Future Research Activity |
有効理論を用いたクォーク・ハドロン相転移の記述の研究では、温度が上昇していった時バリオンがどのように融けるか、この模型の枠内で数値的に詳しく検討する。まだ、ハドロン間の相互作用をどう取り入れるかが今後の重要な課題となる。高エネルギー原子核衝突の初期過程の研究では、強い場の存在がその後の系の発展、特に流体描像と繋がる局所熱平衡にいたる非平衡過程にどのように影響するかが元々の我々の問題であった。実際の重イオン衝突過程は複雑であり、それにどのようにアプローチするかはまだ今後の課題である。
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Causes of Carryover |
研究代表者(松井)が東大からの早期退職にともなう転出により、下半期の研究発表や海外出張が不可能になったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究代表者の松井は新しい勤務先(放送大学)で残された科研費を今年度の科研費に補填し、研究室の研究条件を整備し、残された研究課題の達成とまとめをおこなう。
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Research Products
(8 results)