2016 Fiscal Year Annual Research Report
Multicomponent dark matter
Project/Area Number |
25400250
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
青木 真由美 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (70425601)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 素粒子論 |
Outline of Annual Research Achievements |
暗黒物質は宇宙のエネルギーのおよそ4分の1を占めている。その正体は今のところ不明であるが、弱い相互作用をする電弱スケールの粒子(WIMP)が有力候補の一つとなっている。一方で、宇宙の暗黒ハローの密度問題などの銀河スケール以下の問題(小スケール問題)を解くためには、自己相互作用が大きい暗黒物質の存在が望まれるが、WIMPではそのような大きな自己相互作用を実現するのは困難である。 こうした背景のもと、最終年度は標準模型に新たなU(1)ゲージ対称性を課した模型において、小スケール問題を解決しうる多成分暗黒物質の可能性について議論した。新たなU(1)ゲージ対称性は、破れた後にZ_4離散対称性を残し、それによって二つのスカラー粒子が暗黒物質となる。これら二種類の暗黒物質の残存量や自己相互作用の大きさを解析した結果、一方の暗黒物質が10MeV-100MeV程度の軽い質量を持ち、さらに1.5倍程度重い暗黒光子二つに対消滅する場合、軽い暗黒物質は小スケール問題を解決しうるほどの大きな自己相互作用を持つ可能性があることを示した。このとき、もう一方の暗黒物質はWIMPとなり、100GeV程度の質量をもつ。多成分暗黒物質の枠組みで、大きな自己相互作用を持つ暗黒物質を議論する試みはまだ少ないことから、本研究には大きな意義があると考えられる。 研究期間全体を通じて、多成分暗黒物質を伴う模型について多方面からの議論を行った。特に、通常の暗黒物質の対消滅過程に加えて、多成分暗黒物質では暗黒物質転換などの新たな過程が存在し、それらは暗黒物質の残存量や暗黒物質探索などに大きく影響することが示された。
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