2013 Fiscal Year Research-status Report
「非局在クラスタリング」による通常クラスター構造の理解とクラスター・ガス構造
Project/Area Number |
25400256
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀内 昶 大阪大学, 核物理研究センター, 招聘教授 (60027349)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 空間局在クラスター / 空間非局在クラスター / 反転2重項 / αの直線鎖構造 / THSR波動関数 / クラスター間パウリ斥力 / Container描像 |
Research Abstract |
本年度の目標は「空間局在クラスター」という旧概念により説明されたクラスター状態を「空間非局在クラスター」という新概念によって記述し直すということが中心的な目標であった。その目標を20Neの反転2重項回転帯状態の場合と3αと4αの直線鎖構造の場合に成功裡に行った。この2つの場合を選んだ理由は、これらが「空間局在クラスター」の代表的な場合であるからである。20Neの研究成果は、2つの論文として発表された ('Phys.Rev.Letters110(2013),262501'と'Phys.Rev.C89(2014),034319')。直線鎖構造 の研究成果は1編の論文として発表された('Phys.Rev.Letters112(2014),062501')。これらの研究で取り上げたどの準位の場合でも、Brink波動関数によるGCM(生成座標法)波動関数が単一のTHSR(Tohsaki-Horiuchi-Schuck-Roepke)波動関数とほぼ100%等しいことが示された。THSR波動関数は「空間非局在クラスター」の波動関数であるが、その核子密度を計算すると空間局在したクラスターが存在することが示される。この密度分布が得られる理由はクラスター間のパウリ斥力に起因することが示されるので、ダイナミクスは空間非局在クラスターであるが、キネマティカルにはクラスターが空間局在するということが分かった。空間非局在クラスターを表現するTHSR波動関数は空間拡がりを表すパラメーター「B」を持ち、これがクラスターの動力学を表現する基本的力学変数の役割を持つ。このパラメーター「B」を生成座標として運動方程式を解くと基底状態も空間局在したクラスター状態もクラスター・ガス状態も全てエネルギー固有状態として得られる。クラスター動力学に対するこの新しい理解あるいは描像はContainer描像と命名された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた16Oの12C+α状態の研究や12Cの負パリティ状態の研究はやや遅れているが、その代りにTHSR波動関数の種々の「一見奇異に見える性質」の解明は大きく進展した。この奇異に見える性質の解明によりTHSR波動関数の記述するクラスター動力学の本質の理解が大きく進展し、それによりクラスター動力学のContainer描像の提唱をするに至った。更にまた、3α系に於いて、拡がりパラメーター「B」を1種類から2種類へと増やしたTHSR波動関数による計算が展開していることは、今年度の当初計画で期待した研究の進展よりも大きく進展している。この複数の「B」パラメーターのTHSR波動関数が単一で、1種類の「B」パラメーターの場合よりも、Brink-GCM波動関数をより精密に近似するという事実は、Container描像の内容のより深い理解を与えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
基本的には研究計画調書や交付申請書に記した研究推進を行う。 これらの当初の研究計画で提起されたTHSR波動関数の一般化あるいは拡張の部分は初年度の研究の過程でやや大きく展開された。それは、クラスター系の、ヤコビ座標のような、相対座標毎に拡がりパラメーター「B」を導入する研究が、3α系で行われ、有用な知見が得られたという予備的な成果を含む。今後は、この成果を取り込んだ形で、当初予定していた16Oの12C+α状態の研究や12Cの負パリティ状態の研究の展開を図ることになる。この拡張されたTHSR波動関数による研究の推進は、本研究計画の目的をより深化させた形で行うことになるとともに、定量的にもより精密な研究が展開されることになる。本研究計画は液相の原子核がクラスター・ガス相を経由して核子気体相への相転移する過程の研究も視野に入れるが、拡張されたTHSR波動関数は大いに重要な研究技術である。
|
Research Products
(6 results)