2014 Fiscal Year Research-status Report
「非局在クラスタリング」による通常クラスター構造の理解とクラスター・ガス構造
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25400256
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
堀内 昶 大阪大学, 核物理研究センター, 招聘教授 (60027349)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 空間非局在クラスター / THSR波動関数 / Container / 複数ContainerのTHSR波動関数 / Hoyle状態 / Hoyle状態のBreathing励起 / 3αの彎曲腕状態 / 中性子過剰核 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間非局在クラスター波動関数であるTHSR波動関数はあらゆる種類のクラスター構造の状態を良く表現することを確証することが、この科研費研究課題の基礎であるが、この基礎的問題にとって重要なテーマの1つが12C核の基底状態波動関数のTHSR波動関数による記述である。8Be、16O、20Neの基底状態は単一のTHSR波動関数で99%近く表現されるのに対して12Cの場合は単一のTHSR波動関数で表現できるのは約93%に留まっていたのである。今年度の重要な業績の1つは、3αのTHSR波動関数を1つのContainerを表現するものから2つのContainerを表現するものに拡張するならば、基底状態は単一のTHSR波動関数で98%近く表現できることを示したことである。複数ContainerのTHSR波動関数への拡張は、Hoyle状態よりも高い励起エネルギーの状態の記述にも大きな威力を示すことが明らかにされて来ている。Hoyle状態より上には、Hole状態のBreathing励起状態、3αの彎曲腕状態、が存在する可能性がこれまで議論されて来ているが、2つのContainerを含む3αTHSR波動関数による研究はこの2種類の励起状態の存在を支持している。複数Containerを含むTHSR波動関数はBe同位体の中性子過剰核、9Be、10Beの研究に於いても大きな成功を収めつつある。ここでは、αーαCoreを収めるContainerとValence中性子を収めるContainerを用意するのである。今年度は、RGM模型の昔から始まり現在のContainer模型に至るNuclear Clustering物理理論のReview論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3αと4αの直線鎖構造は典型的な空間局在クラスター構造と見做されて来たので、この構造の状態が空間非局在クラスター波動関数のTHSR波動関数で表されることを明示的に示すことはこの科研費研究課題の重要な目的の1つであったが、その目的は初年度にほぼ達成され、今年度は纏めを行った。今年度に計画された研究の遂行は、ガス的クラスター状態がαクラスターと結合したクラスター構造の研究であり、その代表は「12C(Hoyle)+α」構造の4α系の研究である。この研究の遂行の基礎として「8Be+α」構造の研究から始めたが、この3α系の研究は当初の計画よりも広く深く行われて多くの成果を生んだ。それは2つのContainerを含む3αTHSR波動関数を用いて行われたのである。現在、3α系の研究の更なる追究と共に「12C(Hoyle)+α」系の研究も進めている。3αと4αのこれらの研究は、一般的には複数Containerを含むTHSR波動関数による研究として位置づけられるのであるが、複数Containerを含むTHSR波動関数による研究としては、今年度はBeの中性子過剰同位体、9Beと10Be、の研究に大きな進展があった。複数Containerを含むTHSR波動関数による研究の本格的進展は、当初は最終年度に予定されていたのであるが、今年度の研究はそれを先取りする形で行われた。これら一連の研究成果はElsevier社のReview誌「Progress in Particle and Nuclear Physics」にReview論文としても報告された。
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Strategy for Future Research Activity |
複数Containerを含むTHSR波動関数による研究は今年度に大きく進展したが、更に幾つかのテーマについては一段と進展を図っている。それは、1つには12C系においてHoyle状態より高い励起エネルギーの多くの状態群の研究を一段と進展させることであり、Hole状態のBreathing励起状態と3αの彎曲腕状態の研究推進に加えて更には負パリティ状態の研究を本格的に推進する。もう1つは、16O系において、「12C(Hoyle)+α」系の研究の一層の進展を図ることである。12C系のHole状態のBreathing励起状態と3αの彎曲腕状態の研究については、論文にまとめ出版する予定である。更に3つ目の点は、Beの中性子過剰同位体の10Beの研究をより一段と推進させることである。9Beについてはその研究成果が既に1編の論文として出版されているが、10Beについても最初の論文を纏めてそれを出版する予定である。 複数Containerを含むTHSR波動関数による研究は、原子核が基底状態から多様な励起状態へと構造変化を伴いつつ励起していく動力学の研究にも大きな役割を果たすことが当初の研究計画に於いては期待されていたものであるが、12C系の多様な励起状態の研究はこの当初目的の達成に大きく貢献しつつあり、さらにその方向での研究を推進する。これは16O系での構造変化研究の原型的役割も担っているもので、その研究成果を活用しつつ16O系での構造変化を伴う励起動力学の研究も推進する。 これらの研究に於いては、実験観測量の理論による再現を確かめつつの研究推進が不可欠であり、この実験観測量との比較により、理論推進の方向を常にチェックする。
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Causes of Carryover |
本研究計画に於いてはいくつかの形態の共同研究により研究推進をはかる部分が大きいが、その共同研究の形態として共同研究者の研究機関への訪問や共同研究者の招待がある。この訪問・招待の部分に関して今年度と来年度(最終年度)の全体計画を見渡した 結果、今年度の訪問・招待を減らして次年度に廻すこととしたことが理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記した様に共同研究者の研究機関への訪問と共同研究者の招待が次年度には多く予定されており、その訪問・招待の旅費として使用する。
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Research Products
(6 results)
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[Journal Article] Investigation of 9Be from a nonlocalized clustering concept2015
Author(s)
M.Lyu,Z.Ren,B.Zhou,Y.Funaki,H.Horiuchi,G.Roepke,P.Schuck,A.Tohsaki,C.Xu,T.Yamada
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Journal Title
Physical Review C
Volume: 91
Pages: 014313, 1-9
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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