2013 Fiscal Year Research-status Report
揺らぎの入った相対論的流体力学と重イオン衝突反応への応用
Project/Area Number |
25400269
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
平野 哲文 上智大学, 理工学部, 准教授 (40318803)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クォーク・グルーオン・プラズマ / 相対論的流体力学 / 高エネルギー原子核衝突 |
Research Abstract |
高エネルギー重イオン衝突反応によって生成されたクォーク・グルーオン・プラズマの流体力学的時空発展における揺らぎの影響に注目して研究を行った。 まず、流体力学的時空発展に対する"内的"揺らぎとみなせる「熱揺らぎ」を相対論的流体方程式に組み込む枠組みについて検討した。相対性理論特有の因果律の条件を保ちつつ、揺らぎの影響を取り込むために、緩和過程を含む遅延グリーン関数を用いた構成方程式を書き下し、揺動散逸関係から、一般化されたランジュバン方程式の表式を得た。その揺動力の特性として、色付きの雑音が因果律と密接に関わることを示した。この枠組みが新奇な相対論的流体力学の枠組みを与え、今後、クォーク・グルーオン・プラズマの輸送的性質を導くうえで重要な役割を果たすと考えている。この枠組みを数値計算に実装することは今後の課題である。 また、"外的"揺らぎとみなせる「ジェット伝搬」を、完全流体の近似のもとで定式化し、数値計算への実装を行った。特に(1)大きなエネルギーを持つ一対のジェットが膨張している背景物質中を通過する場合と(2)複数のジェットが一様背景物質中を通過する場合について、シミュレーションを行った。(1)の場合、ジェット軸に対して大角度方向にジェットの運動量が伝搬するメカニズムを提唱し、論文にまとめた。(2)の場合、複数のジェットが伝搬、エネルギー損失をすることで、背景物質中に複雑なマッハ錐状の構造が励起し、特に、流体方程式の非線形性に伴う構造を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、揺らぎ入り相対論的流体力学の枠組みの定式化、ジェット伝搬の完全流体力学への実装を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
揺らぎ入り相対論的流体力学の定式化を行ったので、今後はこの枠組みを数値計算に実装することが今後の大きな課題の一つである。流体揺らぎは局所平衡系の体積の逆数に比例することから、どのような格子サイズでシミュレーションを行うかが一つの鍵となる。その際に、単に数値的に方程式を解くだけでなく、粗視化のスケールをどのように選ぶか、実際にどう行うかという物理的な背景に注目しつつ、数値計算を進めていく。 外的な揺らぎとしてのジェット伝搬を組み合わせた流体数値シミュレーションでは、流体の応答の非線形性に注目する。衝突エネルギーが大きい場合、複数のジェット対が流体中を伝搬する状況を鑑み、一つのジェット対の重ね合わせ以上の複雑な構造、特に不安定性や乱流のような振る舞いを見出すことを目標とする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費として予定していたコンピュータが安価に購入できたため。 次年度に使用する予定の予算のうち、物品費に加算し、より高スペックの計算機の購入に充て、研究を一層推進させる。
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Research Products
(10 results)