2014 Fiscal Year Research-status Report
揺らぎの入った相対論的流体力学と重イオン衝突反応への応用
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25400269
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
平野 哲文 上智大学, 理工学部, 教授 (40318803)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | クォーク・グルーオン・プラズマ / 相対論的流体力学 / 揺らぎの定理 / 高エネルギー原子核衝突 |
Outline of Annual Research Achievements |
高エネルギー原子核衝突反応によって生成されたクォーク・グルーオン・プラズマの流体力学的時間発展に現れる様々な揺らぎに注目し、研究を進めた。 前年度までに構築した散逸に伴う熱揺らぎを数値計算に実装した。通常の粘性に加え、時空の各点で揺動散逸関係を満たすように散逸流に対する揺らぎを与え、クォーク・グルーオン・プラズマの時空発展に及ぼす影響を調べた。 一方で、より熱揺らぎの影響を詳細に調べるために、簡単な1次元膨張系に流体揺らぎの枠組みを適用し、エントロピー、最終的には、粒子の多重度の揺らぎを調べた。非平衡統計力学で導出された「揺らぎの定理」を初めて重イオン衝突反応に適用し、この定理から導かれる粒子多重度の揺らぎに関する定理の導出を行った。 高エネルギー原子核衝突反応では、クォーク・グルーオン・プラズマに加え、その中を通過する大きなエネルギーを持ったパートンも生成される。通過の際にクォーク・グルーオン・プラズマにエネルギーや運動量を供給することから、流体に対し一種の外的な揺らぎを与えるとみなせる。パートンは対となって生成されるが、もし、クォーク・グルーオン・プラズマの中心領域ではなく周辺領域を通過する場合、衝突軸に垂直な方向の方位角分布が大きく歪み、より反応内部で起こっている現象を詳しく調べることができる可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、流体揺らぎの数値計算への実装を完成させたことに加え、計画にはなかった新しいトピックとして、流体揺らぎに絡めて重イオン衝突反応における「揺らぎの定理」を導出することができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
揺らぎ入り流体の数値計算への実装が完成したため、今後は実験で観測される物理量の解析を行い、クォーク・グルーオン・プラズマの物性を引き出す研究を行う。 すでに導出した「揺らぎの定理」は、簡単な1次元膨張系に対するものなので、これを3次元に拡張し、より一般的な定理の導出を目指す。 パートンとクォーク・グルーオン・プラズマ流体との相互作用をより現実的な洗練された模型を用いることで、クォーク・グルーオン・プラズマの阻止能の定量的導出を目指す。
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Causes of Carryover |
海外出張のための航空券の価格が当初の予定していた見積もりと異なるため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に繰り越し、研究を推進させるような物品購入や、研究成果の公表のために旅費など有効に使用する。
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Remarks |
新著紹介「クォーク・グルーオン・プラズマの物理;実験室で再現する宇宙の始まり (秋葉康之 著)」、日本物理学会誌vol.70(2015)150
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Research Products
(14 results)