2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400273
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
江口 徹 立教大学, 理学研究科, 特任教授 (20151970)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 超弦理論 / ムーンシャイン現象 / K3曲面 / 保型形式 |
Outline of Annual Research Achievements |
25年度に引き続き、K3曲面上にコンパクト化された超弦理論に現れるマシュー群の対称性(マシュームーンシャイン)に関連する研究をおこなった。N=4超共形代数の指標はBPS表現はモックモジュラー形式であり、BPS表現はモジュラー形式でありこの2つが混じり合ってマシュー群の対称性を作っている.モックモジュラー形式は特異な変換性を持ちそのままではモジュラー形式にならないが、物理におけるregularizationにあたる項を付け加えると変換性が改善されてτ,τ*(複素共役)に依存する実ヤコビ形式になる。この理論は数年前に数学者(Zwegers)によって作られた. 本年度江口はZwegersの構成を詳しく調べ、モックモジュラー形式とそのregularizationの項がひとつにまとまって、ポアンカレ級数のような表式に表す事ができモジュラー不変性が露に読み取れる形で表記できる事を見いだした.この表式は今後の研究で役立つと期待される. 一般に非コンパクトなターゲット空間を持つ超弦理論は、理論に赤外発散を持つためそのままではモジュラー不変性が破れるが、このとき経路積分の評価から自然にregularizationの項が現れて最終的に理論のモジュラー不変性を回復する事が以前の研究(Troost,江口,菅原)で知られている.江口は経路積分の評価から今回発見したモックモジュラー形式とregularozationが融合した表式が自然に与られることを示した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々のマシュームーンシャインの発見は関連する数理科学に大きなインパクトを与えた.この数年間でチューリッヒ、エジンバラ、ストーニーブルック、ペリメーター、ダラムなどで 国際研究集会が開かれており外国の研究者の研究も非常に活発である.しかしまだ、その本質を解き明かしたような研究は現れていない. K3を拡張してindexの大きなヤコビ形式を分解したウンブラルムーンシャインや現在進行中のspin(7)多様体などが新しいムーンシャイン現象を見つけているが、ウンブラルムーンシャインは幾何学的な解釈が不明確とされている.今後、マシュムーンシャイン現象の理解には数年はかかるのではないだろうか?我々は現在、モックモジュラー形式に関する基礎的な研究を行っており、将来役立つ事に期待している.また、3次元カラビヤウ多様体の場合には特別なムーンシャイン現象が存在するのではないかと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
カラビヤウ多様体は共通の楕円種数(全体の整数倍を除く)をもち、そのままではムーンシャイン現象を示さないが、モジュライ空間における特別な点、ゲップナーポイントにおいては、新しいタイプのムーンシャイン現象をもつ可能性が有る.今後この問題を調べていきたい. また、26年度に発見したregularizeされたモックモジュラー形式の表式を用いた詳しい研究を行う予定である.
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