2016 Fiscal Year Research-status Report
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25400283
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
阪村 豊 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (90525552)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 高次元理論 / 余剰次元模型 / ブレーン |
Outline of Annual Research Achievements |
6次元理論における局所的質量項が4次元有効理論のスペクトルに及ぼす影響について調べた。余剰次元模型を構築する際には様々な理由から余剰次元空間に局在した項を導入することがある。特にオービフォールドの特異点やブレーンが存在する場合には対称性から許される項としてそのような項の存在を仮定することは自然である。その中でも局在化した質量項が有効理論の質量スペクトルに与える影響を理解することは構築した模型の実験的検証の上で非常に重要である。余剰次元が1次元である5次元理論の場合はこのような質量項は余剰次元方向の境界条件を変える働きをし、その場合の質量スペクトルや対応する波動関数も解析的に求められることが多い。これはブレーンが余剰次元の境界に対応し、対応するモード方程式が常微分方程式になる為である。これに対してより高次元の理論の場合、4次元的なブレーンはもはや境界ではなく、モード方程式も偏微分方程式となって解析が難しくなる。ここでは平坦な時空中の6次元スカラー場の理論を例として、4次元的なブレーンに局在する質量項を入れた場合に質量スペクトルがどのように局所的質量パラメータに依存するかを数値的に求め、その定性的、定量的性質を明らかにした。結果は5次元理論の場合に比べて局所的質量項の与える影響は小さく、質量パラメータが無限大の極限でも最小の質量固有値はせいぜいコンパクト化スケールの6分の1程度までしか上がらないことが分かった。これは余剰次元が大きくなると局所的質量項の影響は希釈されると予想されることから理解できる。このことより、高次元理論において現象論的に望ましくない軽いモードを局在化した質量項によって重くしようとするときはコンパクト化のスケールを十分高く採らなければならないことが分かる。これらの結果は今後高次元超重力理論に基づいて具体的に模型構築を行う際に重要な指針を与えるものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は高次元理論に基づく現象論的模型構築を行う際に重要な構成要素であるブレーンに局在した項が有効理論に及ぼす影響を中心に研究を行った。特に質量スペクトルや波動関数の形状に大きな影響を与える局所的質量項について数値的に調べた。本研究では簡単の為に超対称性や重力については考慮しなかったが、これらは局所的質量項の影響を調べる上では本質的な役割を担わない為、この研究で得られた知見は超重力理論に拡張した際にも適用できるものである。また、この研究とは別に6次元超重力理論を4次元N=1超場を用いて記述するという研究も並行して行った。こちらの研究は成果としてまとめるところまでは至らなかったがそれなりに大きな進展があり、次年度に研究成果として発表できることが期待される。 以上の理由から平成28年度の進捗状況はおおむね順調であるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は前年度に行った、6次元超重力理論を4次元N=1超場で記述するという研究を引き続き行い、研究成果として発表することを目指す。更にその成果を用いて4次元有効理論をN=1超場の構造を保ったまま導出する方法を開発する。この方法が完成すれば6次元超重力理論に基づく様々な余剰次元模型を見通し良く解析することが出来、6次元理論に特有の現象論的予言を得ることが出来ると期待される。更にこれまでに得られた知見を基にして、これらの系統的解析方法をより高次元の超重力理論へ拡張することも計画している。
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Causes of Carryover |
大阪大学で開催された日本物理学会第72回年次大会に参加した際に宿泊予定を当初想定していた計画から変更して実家に宿泊した為、宿泊費分の経費が浮いた為。また、オーストラリアのメルボルンへの出張費も想定よりも若干安くついた為。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた次年度使用額は少額の為、当初の使用計画からの大きな変更はない。予定通り学会や研究会及び研究打ち合わせの為の旅費を中心に使用する。
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Research Products
(3 results)