2013 Fiscal Year Research-status Report
厳密なカイラル対称性を持つ格子フェルミオンによるカイラルダイナミクスの研究
Project/Area Number |
25400284
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松古 栄夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 助教 (10373185)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 格子ゲージ理論 / シミュレーション物理 / 素粒子物理 |
Research Abstract |
平成25年度は、格子上で良いカイラル対称性を持つドメインウォール・フェルミオン作用を用いたSU(2)ゲージ理論の研究を進めた。基本表現のフェルミオンを動的に含むシミュレーションをフレイバー数2,4,6,8に対して行い、閉じ込めとカイラル対称性の破れのフェルミオン質量に対する依存性を調べた。その結果、フレイバー数2,4については質量ゼロへの外挿でも閉じ込め的振る舞いであるが、フレイバー数6,8の場合は格子定数の質量依存性が大きく、詳細な解析が必要であることがわかり、引き続き研究を進めている。 動的シミュレーションは計算コストが大きく高速化が不可欠のため、コードの超並列計算環境でのチューニングを行った。本研究ではKEKのシステムを中心に用いており、IBM Blue Gene/Q, Hitachi SR16000 に対する最適化を行い、特にスレッド並列化によって計算性能の向上が得られた。引き続き性能向上を行なっており、また開発したコードは格子QCD共通コード開発プロジェクトBridge++の一部として公開準備を進めている。 有限温度での相転移現象、随伴表現のフェルミオンについての準備的研究を進めた。格子上で厳密なカイラル対称性を持つオーバーラップフェルミオンを用いた研究についても、固有値モードの解析を進めている。ドメインウォール作用は5次元の定式化であり、5次元方向無限大の極限ではオーバーラップ演算子に等しくなるが、その際どのように近づいてゆくかを固有モードの相関を通して理解する研究を進めている。 これらの結果について国際会議及び国内の会議で報告し、プロシーディング1篇として公表した。また関連の深い共通コードBridge++の開発に関してプロシーディング1篇が公表された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に不可欠な数値シミュレーションは概ね順調に進められている。コード開発と高速化にやや手間取っていることによって随伴表現や有限温度への展開が少し遅れているが、コードの整備には目処がついたので、今後の進捗は問題なく進むと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在進めている基本表現フェルミオンでのSU(2)ゲージ理論での研究をまとめるために必要な解析を優先的に進めつつ、随伴表現や有限温度での準備的研究から本格的シミュレーションに移行するための条件を整える。基本表現のフェルミオンでの研究では、現在はドメインウォール・フェルミオンを用いているが、よりカイラル対称性が厳密に近い、改良されたドメインウォール・フェルミオンの採用を検討している。またこれと厳密なカイラル対称性を持つオーバーラップ・フェルミオンの違いは、これらの作用に含まれるWilson演算子の低周波数モードであるので、これらのモードの果たす役割について詳しい研究を進めていきたい。またアルゴリズムの改良と、物理量の高精度な測定のためのコード整備を進める。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は概ね予定通りに支出を行ったためほぼ予算を使い切ったが、若干の余剰が生じたため、調整を行わず次年度に残した。 近傍への国内旅費または消耗品費として利用する予定である。
|