2014 Fiscal Year Research-status Report
厳密なカイラル対称性を持つ格子フェルミオンによるカイラルダイナミクスの研究
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25400284
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松古 栄夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 助教 (10373185)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 格子ゲージ理論 / シミュレーション物理 / 素粒子物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、前年度に引き続き格子上で良いカイラル対称性を持つドメインウォール・フェルミオンを用いたSU(2)ゲージ理論の研究を進めた。基本表現のフェルミオンを動的に含むシミュレーションによって生成した、フレイバー数2,4,6,8のゲージ配位の上でメソン相関関数を測定し、メソン質量と崩壊定数を求めた。質量と崩壊定数のフェルミオン質量、ゲージ結合定数、フレイバー数に対する依存性を調べ、フレイバー数8の場合にフェルミオン質量ゼロの極限ではカイラル対称性の破れと矛盾する結果を得た。引き続きデータを精細化し、詳しい解析を進めている。これらの成果を、国際会議での口頭発表2件、プロシーディング1篇として公表した。 この計算にはKEKのスパコンシステム、日立SR16000とIBM Blue Gene/Q を主に用いた。本研究には格子QCD共通コード開発プロジェクトBridge++のコードを変更して用いているが、本研究からのフィードバックとして、SU(3)ゲージ群からSU(2)及び一般のSU(N)への拡張と、OpenMPを用いたスレッド並列化については、2014年9月にリリースしたBridge++ ver.1.2に組み込まれている。本課題で導入したGPUを搭載した計算サーバでのコード開発も進めた。これらに関して、国際会議のプロシーディング2篇を公表した。 随伴表現のフェルミオンについても引き続き準備的研究を進めている。ドメインウォール・フェルミオン作用に含まれるWilson演算子には、格子上に特有な青木相という相構造が現れるが、ドメインウォール作用が物理的意味を持つには、青木相に挟まれた位置にあるパラメターを選ぶ必要があるため、この青木相の構造を研究した。随伴表現のフェルミオンについても、ドメインウォール・フェルミオンを用いた研究の準備が整いつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
数値シミュレーションは順調に進んでおり、本論文の準備を進めている。コード開発の成果をBridge++の公開バージョンに反映し、GPU等のアクセラレータを用いた計算のためのコード開発もほぼ完了することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度はこれまで基本表現のドメインウォール・フェルミオンを用いて行なってきたシミュレーションの解析を精密化するとともに、計算結果を論文の形でまとめることが最大の課題である。準備が整いつつある随伴表現でのドメインウォール・フェルミオンを動的に含む計算を実行し、SU(2)ゲージ理論としてのフェルミオン表現の対称性による振る舞いの違いを研究する。よりカイラル対称性を高く保つための作用の改良、有限温度での性質の変化、固有値モードの相関などについても研究を進める。カイラル対称性を厳密に保つオーバーラップ演算子との違いが固有値モードにどのように現れるかについても調べたい。
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Causes of Carryover |
データ整理・解析用の計算機の購入を計画していたが、早急に必要な状況でなかったため平成27年度に購入することとし、次年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
データ整理・解析用の計算機の購入及びソフトウェアの整備に充てる予定である。
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