2015 Fiscal Year Research-status Report
厳密なカイラル対称性を持つ格子フェルミオンによるカイラルダイナミクスの研究
Project/Area Number |
25400284
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
松古 栄夫 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 計算科学センター, 助教 (10373185)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 格子ゲージ理論 / シミュレーション物理 / 素粒子物理 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には、前年度に引き続き格子上で良いカイラル対称性を持つドメインウォール・フェルミオンを用いたSU(2)ゲージ理論の研究を進めた。基本表現のフェルミオンを動的に含むシミュレーションでは、これまでに行ったフレイバー数2,4,6,8での研究をまとめつつあるが、どのフレイバー数でカイラル対称性の破れが失われるかを明確に示すために、これまでの計算よりも小さい質量領域を調べるための作用の改良と解析法の検討を行なっている。 随伴表現のフェルミオンに対しては、引きつづき青木相の構造に関する研究を進めた。これはドメインウォール・フェルミオンや、格子上のカイラル対称性を厳密に持つオーバーラップフェルミオンを用いるために必要な準備的研究である。これまでよりも格子サイズを大きくした計算を行い、相構造が格子サイズに依存せず現れることを示した。これにより動的フェルミオンを用いた計算を行う準備が整った。 これまでに開発した並列計算機用のコードに加え、GPUなどの演算加速器を利用するためのコード開発と最適化を行い、実際の計算に応用した。特に今後の複雑な計算への応用のために、これまで用いてきたOpenCLによる実装に加えて、より迅速に移植が可能なOpenACCでの実装を行い、両者の特質を比較した(査読有りプロシーディングとして公表)。 以上のように準備的研究や結果をまとめる方針の策定に想定より時間がかかったため、当初の計画から研究期間を一年延長することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
数値計算の計画策定と実行に想定以上の時間がかかってしまい、結果をまとめる上で十分な計算データ取得にもう少し時間が必要である。また本研究のために有効な計算リソースを利用する上で、既存の計算プログラムを変更、最適化する必要があり、そのためのコード開発に時間を要した。これらについては十分な目処がたった状況である。このため、本年度を最終年度とする当初の計画を変更し、一年の延長を申請し認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
基本表現でのシミュレーションについては、これまでよりも軽いフェルミオン質量領域への拡張を行う。このための作用の改良、コードの開発を進めている。これによりカイラル対称性の破れのフレイバー数依存性がより詳細に理解できると期待している。またこれを明確に示すことのできる、メソンのコンプトン波長が系のサイズよりも大きい、ε-領域と呼ばれる条件下でのシミュレーションを検討している。 随伴表現での計算については、有限格子定数効果の現れる青木相を避け、動的なフェルミオンを含む計算を行い、カイラル対称性と閉じ込めの性質を研究する予定である。
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Causes of Carryover |
データ整理、解析用の計算機を導入する予定であったが、研究上不可欠な状況ではなかったため、購入を延期した。研究年度を一年延長したため、平成28年度の初期に導入を予定している。成果報告のための旅費等を予定していたが、研究進捗の遅れを鑑み28年度に繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の早い時期にデータ整理、解析用のパーソナルコンピュータを購入する予定である。残りは研究打ち合わせ、成果報告の旅費に充てる。
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