2013 Fiscal Year Research-status Report
超弦とブレーンによる現実的な素粒子模型の構築と標準模型を超えた新物理描像
Project/Area Number |
25400285
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
溝口 俊弥 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (00222323)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 素粒子模型 |
Research Abstract |
超弦理論は標準模型に類似した模型を数多く作るが、それらは三世代を「実現」することはできても「説明」することはできていない。「世代統一」(family unification)は、現在観測されるすべてのクォーク・レプトンは一つの例外群超対称コセットシグマモデルから生じる、という古くからの考え方で、特にE7/(SU(5)×U(1)^3) に基づく模型は、ちょうど三世代のクォーク・レプトンを自動的に実現する。最近、arXiv:1403.7066 およびその関連研究(投稿準備中)において、これらの模型は「F理論」という超弦理論の枠組みを使えば自然に実現できることを示した。すなわち、ある特定の小平特異性をもつ合流した7-ブレーンが複素1次元方向に変形され、低い特異性になっているような余次元2のブレーン配位の近傍には、ブレーンをつなぐストリング・ジャンクションがちょうどシグマモデルに対応した量子数をもつ超対称多重項を生成する。このような幾何学的配位は、E7/(SU(5)×U(1)^3) シグマモデルに対応するスペクトラムを実現するばかりでなく、自発的に破れたU(1)荷電をもつスカラー場の期待値により湯川結合を説明するフロガット・ニールセン機構に必要な荷電多重項を内在することを見出し、クォーク・レプトンの湯川階層構造の違いや大きなレプトン混合角をよく説明する不均衡 (lopsided) 型の湯川テクスチャが必然的に導かれることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超弦による従来の素粒子模型はモジュライに起因する深刻な困難に直面しており、そのため特に標準模型を超えた新しい物理描像を一意的に予言することはできない。本研究は、ヘテロティック弦の交差NS5-ブレーンによるE8 対称性の自発的破れに伴う南部・ゴールドストンボゾンとその超対称パートナーのフェルミオンを用いて現実的なコセット(E8に拡張された九後・柳田モデル)をターゲット空間とする超対称非線形シグマモデルを実現し、準南部・ゴールドストンフェルミオンが局在するブレーンの横方向(transverse)次元をコンパクト化することによりモジュライの少ない現実的な4+1余剰次元モデルを超弦の枠内で構成し、その理論的・現象論性質を調べて標準模型を超えたヒッグズ後の新物理描像を探求することを目的として立案された。 超対称非線形シグマモデルにより世代構造の理解を目指すこの「世代統一」(family unification)の超弦理論における実現に関して、今年度は目覚ましい進展があった。すなわち、研究実績の概要で述べたように、超対称非線形コセットシグマモデルに対応した量子数をもつ超対称多重項は、F理論のある特別な余次元2の特異性を持つ7-ブレーンによって実現できる。特に、E7小平特異性がA4に緩むような配位から九後・柳田モデルは実現され、されに最大の特異性であるE8からE7への変形によるストリングジャンクションから3つの必要なフロガット・ニールセン場までもが供給されることが見いだされた。この新しい構成方法は、ヘテロティック弦の交差NS5-ブレーンを用いた模型におけるゲージ対称性をSO(10)やSU(5)にまで破る困難と比較してきわめて簡明かつ現象論的にも望ましく、今後の更なる発展が期待できる成果が得られた今年度の達成度は当初予定を上回るものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究実績の概要の項で述べたように、「F理論による世代統一」は、超弦理論の枠組みの中で三世代のフレーバーを(postdictでなく)「予言」をする全く新しい考え方である。今後は、この新しいコンパクト化スキームの理論的詳細の詰めと並行して、特にフレーバー構造に関して検証可能な何らかの提言を目指す。具体的には、前者に関してはオービフォルドあるいはボーテックス型ヒッグズ配位など理論的詳細やアノマリーインフローの解析など、後者に関しては輻射補正などフロガット・ニールセン機構におけるO(1)因子の決定、特徴的なヒッグズセクターの物理、さらにはD項インフレーション理論の当該模型への移植可能性の吟味などについても考えてみたい。また、他大学の研究者と協力して個人的科研費を財源にミニワークショップを開催計画中。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
現在使用しているデスクトップ型およびノート型パソコンの更新費用を計上したが、処理速度などの機能に関してより高性能の製品の発売後に更新した方が予算の効率的な執行につながると判断したため。また、今年度は研究がかなり進展したので、外国出張をその成果の論文発表後に延期したため。 昨年更新するはずだったパソコンを新製品発売後に購入する。また外国出張を行うか、または海外の研究者を招聘してミニワークショップを開催する。その他の当初予算は計画通りに執行する。
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Research Products
(6 results)