2015 Fiscal Year Research-status Report
超弦とブレーンによる現実的な素粒子模型の構築と標準模型を超えた新物理描像
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25400285
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
溝口 俊弥 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (00222323)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超弦理論 / 大統一理論 / 素粒子理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、2014年に提唱して以来研究を続けている、F理論のブレーンの多重特異点の普遍性に基づく、コンパクト化空間の詳細によらない局所的幾何学的構造に基づくカイラル物質場の生成機構に関する研究をさらに継続した。 素粒子の標準模型を超え重力をも統一する究極理論として超弦理論が提唱されて久しいが、具体的に例えばインフレーション/再加熱後にエネルギーが受け渡されるはずの標準模型セクターがどのようなものなのか、超弦理論は未だ確定することができていない。この機構の特長は、すべてのクォーク・レプトンは単一の例外群超対称コセットシグマモデルに由来するという「世代統一」(family unification)の古くからの考え方を超弦の枠組みで実現することができる、という点である。特に、SU(5)ゲージ対称性を実現するブレーンの特異性が局所的にE7にまで多重拡大するようなブレーン系には、現実に観測されるような三世代のクォーク・レプトンに対応する大統一理論の多重項がちょうど局在することがわかり、自然の必然性を超弦から説明する大きな手がかりになると期待される。 今年度は特に、多重特異点における余計に現れるカイラル場の生成のため一見量子異常が相殺しなくなるように見える問題は、ゲージブレーン上で複数のマターブレーンの接点が合流することにより矛盾なく回避できていることを示した。また、前年度まで6次元理論にとどまっていた構成をより現実的な4次元理論に拡張し、特にヒルツェブルフ曲面上に楕円ファイバーされたカラビヤウ3-フォルドにコンパクト化されたヘテロティック弦で3世代となるCurio による模型のF双対を一般化されたヒルツェブルフを用いて構成し、ゲージ対称性がSU(5)の場合に完全に分類した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも述べたように、F理論のブレーンの多重特異点の普遍性に基づくコンパクト化空間の詳細によらない局所的幾何学的構造に基づくカイラル物質場の生成機構に関する研究を、今年度はいよいよ現実的な4次元コンパクト化に拡張・応用することに取りかかることができたこと、またLooijenha の重み付き射影空間が有理楕円曲面のブローアップにより得られることなど、有理楕円曲面の特異性と断面の相補的なE8構造を主張する Mordell-Weil 格子によるカイラルな物質場の生成機構の理解が進んだこと。
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Strategy for Future Research Activity |
F理論のブレーンの多重特異点の普遍性に基づく、コンパクト化空間の詳細によらない局所的幾何学的構造に基づくカイラル物質場の生成機構を4次元コンパクト化にさらに応用し、フロガットニールセン機構による階層的な湯川結合の生成や超対称性の破れなど、より現象論的な研究に結びつけ、実験観測に対し何らかの提言をすることを目指す。
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Causes of Carryover |
最終年度には小規模な研究会を科研費で開催する予定であったが、今年度は例外的にKEKで例年行われる大きな理論研究会が通常翌年春に行われるところ12月に早まり、その関係から研究会参加者ならびに招待講演者の都合が折り合わず、日程調整がつかなかったことにより次年度に持ち越したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度開催できなかった小規模な研究会を開催し、講演者への講演謝金並びに参加者の旅費に充当する。
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Research Products
(3 results)