2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400289
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama Institute for Quantum Physics |
Principal Investigator |
杉野 文彦 岡山光量子科学研究所, その他部局等, 専門研究員 (60393419)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 格子ゲージ理論 / 超対称性 / 行列模型 / 超弦理論 |
Research Abstract |
本研究の主眼は4次元を含む様々な次元の超対称ゲージ理論の非摂動的理解を格子定式化を通じて達成することである。そのための第一の目的としては、本研究代表者が進めてきた超対称性の一部を厳密に保つ格子定式化の方法を超対称 QCD 系をはじめとする様々な超対称ゲージ理論に拡張し、数値解析を行うことである。第二の目的としては、2次元超対称ゲージ理論の格子定式化に行列模型の方法を用いることにより4次元理論を構成することである。 第一の目的に関して、連携研究者の松浦壮氏とともに2次元 N=(2,2), (4,4) 超対称ヤン・ミルス理論の格子定式化におけるゲージ場の取り扱いを大きく簡単化することに成功した。これにより数値計算を行う際の労力が軽減され、理論の非摂動的理解が進むと期待される。また、このゲージ場の構造は様々な超対称ゲージ理論の格子定式化においても共通する部分が多いため、簡単化された格子理論の新たな解析的な性質を調べることは定式化の拡張を考える上で重要である。 第二の目的に関して、連携研究者の黒木経秀氏とともに二重井戸ポテンシャル中のゼロ次元超対称行列模型と2次元タイプIIA超弦理論の対応を両者の相関関数を具体的に計算し、結果を比較することにより示した。さらに、Michael G. Endres 氏、および連携研究者の黒木経秀、鈴木博両氏とともに、この行列模型の超対称性が自発的に破れ、かつそれが超弦理論を定義する二重極限においても生き残ることを解析的に示した。上の対応に基づくと、これは2次元タイプIIA超弦理論の時空の超対称性が非摂動効果により自発的に破れることを示唆している。我々の知る限り、超弦理論の研究において非摂動効果による超対称性の自発的破れが解析的に議論されている例はないため、この研究を進めることは超弦理論における超対称性の破れの機構を解明する上で意義深いと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一の目的の超対称ゲージ理論の格子定式化の手法の拡張に関しては、基礎となる成果として格子理論のゲージ場の取り扱いを大きく簡単化する定式化を見出しており、さらなる進展が待たれる。 第二の目的の2次元超対称ゲージ理論の格子定式化を4次元に拡張する上での行列模型の手法の開発に関しては、ゼロ次元行列模型から2次元超弦理論を構成する例を具体的に与えた。さらにこの行列模型に関する興味深い非摂動効果を見出し、超弦理論において非摂動効果によって超対称性の自発的破れが起こることを初めて解析的に明らかに示した。 第一の目的の事項では若干遅れ気味であるが、第二の目的の事項では当初の期待以上の進展がもたらされたので、総合的にはおおむね順調に進展していると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の目的に関しては本年度に得た基礎となる成果に基づき、これまでの超対称ゲージ理論の格子定式化を物質場を含む超対称 QCD 系に拡張し、数値計算を行うことも視野に入れて解析を進めていく。 第二の目的に関しては本年度に行った超対称行列模型の解析を進展させて、より詳細な2次元タイプIIA超弦理論との対応を探るとともに、さらにより高次元の超弦理論を表す超対称行列模型を見出したい。 そして、様々な超対称行列模型と様々な超対称ゲージ理論の格子定式化の構造を比較検討することで、2次元超対称ゲージ理論の格子定式化を4次元に拡張する手法を系統的に見出す計画である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は海外での研究会に出席、講演するための旅費は別の財源からまかなうことができ、本補助金の支出は国内旅費および書籍購入に関するものにとどまったためである。 次年度の7月に欧州3か国において開催される国際研究会に出席、講演するための旅費として使用する計画である。
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Research Products
(12 results)