2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400298
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
陣内 修 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (50360566)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ピクセル検出器開発 / 検出器物質量測定 / 長寿命粒子探索 / 国際研究者交流 / 国際情報交換 / スイス / CERN |
Outline of Annual Research Achievements |
計画調書に記した平成26年度以降の研究計画に従い検出器開発とデータ解析に関する研究を行った。 PPS検出器新機能の評価と耐放射線の研究に関して:前年度まではピクセル境界付近にあるバイアス構造により検出効率の低下が観測され、その原因がほぼ特定でき現象が理解できるようになった。26年度は、このバイアス構造を電極で隠し込む新しい設計を用いることで、検出効率が落ちこまないピクセル検出器の開発が行われた。26年度に行った数回のビーム試験にによって、新設計が期待通り機能していることが実証できた。各設計での検出効率の落ち具合も定量的に評価することができた。今後は本番の実験で使用する形式(1つの大きなセンサーに4つのASICチップをつなげて信号を読みだす)のものを製作し、その性能評価を行うことが課題となる。 データ解析に関して:26年5月に設置された最内層の飛跡検出器IBLのコミッショニングに参加した。宇宙線を用いた荷電粒子のヒット情報のオンラインモニタリングに参加して、検出器の運転性能を評価した。また平成25年度に引き続き、ハドロン相互作用を利用した物質量測定法の精度を向上させる研究を進めた。長寿命粒子の探索に関しては、解析グループで進めていた2012年のLHCデータを用いた解析がまとめられ、論文の出版に至った。この論文では特に背景事象の見積もりが重要であり、不定性を抑えるためにデータ自身を使って評価する必要がある。この解析に指導している大学院生が大きく貢献し、論文の核心部の結果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
PPS検出器新機能の評価と耐放射線の研究に関しては概ね、計画通りに進めることができている。 LHCは2013,2014年は加速器の増強のために、休止していた。重心系衝突エネルギーをRun1における8TeVから13TeVに上げ、27年度の6月から陽子陽子衝突運転を再開する予定である。26年度に出版した論文は、本研究課題がターゲットにしている「隠れた粒子セクター」に起因する衝突点から離れた2次バーテックス(DV)を直接探索するものではなく、一般的な長寿命粒子からのDVを探索するものである。27年度はこの隠れた粒子セクターに特化した解析に取り組むが、27年度の運転再開に向けて共通に使われている解析ソフトウェアの枠組みが大幅に変更され、その変更に対処することに多くの時間を割くことを余儀なくされている。13TeVの解析は全てこの新しいソフトウェア構造で行われるため、これは避けて通れない変更である。
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Strategy for Future Research Activity |
PPS検出器の開発・評価に関して、27年度は実験本番で使われるものと同じ形式で実装されたセンサーの評価を行うことが最優先となる。4つの読み出しチップのつなぎ目の構造付近の性能評価が課題となる。 「隠れた粒子セクター」の探索のためのデータ解析に関しては、LHC13TeV運転に向けた解析に着手する。特に、これまでの解析手法では、発生したミュー粒子同士の間隔が非常に狭く、分離の困難さ故に感度が低かった事象に対して、IBLの導入による改善、および高粒子密度下において粒子の分離を改善する、新しい飛跡再構成法を用いることで、検出効率を向上させる。
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