2015 Fiscal Year Research-status Report
直線偏光γ線による低エネルギー電気双極子遷移の発現メカニズムの研究
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25400303
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
静間 俊行 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究主幹 (50282299)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湊 太志 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力基礎工学研究センター, 研究員 (00554065)
宮本 修治 兵庫県立大学, 付置研究所, 教授 (90135757)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 核共鳴蛍光散乱 |
Outline of Annual Research Achievements |
兵庫県立大学・高度産業科学技術研究所のニュースバル電子蓄積リング施設で稼働中のレーザーコンプトンガンマ線ビームを用いて行ったCr-52及びPb-207の核共鳴蛍光散乱実験データの解析を行った。厚さ数cmの標的を用いた核共鳴蛍光散乱実験のデータ解析では、遷移強度を求める際、アトミックな散乱に加えて、核共鳴蛍光散乱による自己吸収の効果を考慮する必要がある。そこで、これまでに測定したCr-52の実験データに関して、自己吸収の効果を加えた解析を新たに行い、核共鳴蛍光散乱実験で観測された約40本のガンマ線遷移対して、より正確に遷移強度を決定した。その結果、励起エネルギー7.5MeVから12MeVにおける全崩壊幅は、38eVとなり、既知の値の約2倍となることが分かった。また、入射ガンマ線ビームの偏光面に対する散乱強度の非対称度から求めた散乱ガンマ線の多重極度の情報をもとに、励起エネルギー7.5MeVから12MeVまでの準位に対して、電気双極子遷移強度及び磁気双極子遷移強度を求めた。さらに、Pb-207についても、励起エネルギー5MeVから7MeV領域において、約20本の共鳴散乱ガンマ線を観測し、これまでの共鳴散乱実験で観測されていた11本の遷移の内、8本の遷移に対して新たに、多重極度を決定し、また、今回、新たに観測した9本の遷移に対しても多重極度及び遷移強度を決定した。一方、中重核の低エネルギー電気双極子遷移強度の測定では、入射ガンマ線の強度や直線偏光度及び計測システムの不感時間をより正確に求める必要がある。入射ガンマ線の直線偏光度は、グラントムソンプリズムを用いて、電子ビームとレーザー光の衝突点の後方で測定を行い、波長板を用いてレーザー光の偏光面を回転させてレーザーパワーの変化を測定し、レーザー光の直線偏光度を決めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
入射ガンマ線の強度や直線偏光度及び計測システムの不感時間の正確な測定方法を開発した。また、新たに自己吸収を考慮した解析を行い、より精度の良い遷移強度の値を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ニュースバル放射光施設において、鉄や鉛領域核などの核共鳴蛍光散乱実験を行い、実験データの解析から、電気双極子遷移と磁気双極子遷移の強度分布を求める。また、理論計算との比較から、双極子励起の発生メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画を効率的に進めた結果、運搬費、旅費を節約することができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度は、測定の高精度化を図るためにH27年度に見出した、中重核の低エネルギー電気双極子遷移強度の測定における入射ガンマ線の強度や直線偏光度及び計測システムの不感時間の正確な測定方法を用いて兵庫県立大学・高度産業科学技術研究所のニュースバル放射光施設での核共鳴蛍光散乱実験を行う予定である。次年度使用額は、ニュースバル放射光施設における核共鳴蛍光散乱実験を行うための施設使用料、機器輸送費、国内旅費、消耗品として使用する。また、成果発表のための外国旅費として使用する予定である。
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Research Products
(4 results)