2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400304
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
牧井 宏之 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門・先端基礎研究センター, 研究員 (20425573)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中性子捕獲反応 / 中性子捕獲断面積 / 元素合成 / r-過程 / 核データ |
Outline of Annual Research Achievements |
中性子捕獲反応がβ崩壊よりも早く進むr-過程と呼ばれる元素合成過程を理解する上で重要な物理量の一つと考えられているベリリウム-9の中性子捕獲反応断面積の測定を行った。測定は大強度陽子加速器施設(J-PARC)、物質・生命実験施設(MLF)内のBL04に整備された中性子核反応実験装置(ANNRI)を用いて行った。 J-PARC / MLF の核破砕中性子源において発生したパルス化中性子ビームは中性子源を取り囲むように設置された減速材でエネルギーを落とした後、ANNRIビームライン上流に設置されたコリメータで試料の形状にあわせて成形され、中性子源から21.5メートルの位置に設置した試料に照射される。試料での中性子捕獲反応によって発生したγ線は試料を取り囲むように設置されたGeスペクトロメータで観測した。使用したGeスペクトロメータはコンプトン抑止用のBGO検出器に囲まれた、2台のクラスター型Ge検出器から構成され、標的で散乱された中性子や標的以外の物質で発生したγ線に対する遮蔽に格納されている。入射中性子のエネルギーはJ-PARC / MLFの中性子源に陽子ビームパルスが入射してからGeスペクトロメータでγ線を観測するまでの時間差(中性子の飛行時間)から決定し、熱領域から数eVまでの中性子エネルギー領域でベリリウム-9の中性子捕獲反応で生じるγ線が観測できていることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成25年5月に発生したJ-PARCハドロン実験施設における放射性物質漏えい事故の影響から、平成26年度においても多くの実験課題が申請されており、十分な測定時間を確保することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
J-PARC / MLFのような核破砕中性子源を用いた測定においては、目的の試料を用いた測定だけでなく、試料で散乱された中性子に起因するバックグラウンドを確認するための測定や、試料に入射した中性子束を確認するための測定が必要である。目的の試料を用いた測定以外のものについては、他の実験グループとデータを共有する等、効率を良くデータを収集できるようにする。 これまでの測定でGeスペクトロメータでは1keVを超える高い中性子エネルギー領域での測定が難しいことが判明したため、ANNRIの下流部分、中性子源から27.9mの位置に設置されているNaI(Tl)検出器や研究代表者が所属するグループが所有しているLaBr3検出器を用いた測定を行う。
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Causes of Carryover |
平成25年5月に発生したJ-PARCハドロン実験施設における放射性物質漏えい事故の影響から、平成26年度においても多くの実験課題が申請されており、十分な測定時間を確保することができず、当初予定していたホウ素-11の中性子捕獲断面積測定及び、1keVを越える高い中性子エネルギー領域での測定に必要な中性子遮蔽材の仕様決定に必要な試験測定が行えなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度前期の測定で中性子遮蔽材の仕様決定を行うための基礎データを取得し、それを元に中性子遮蔽の最適化を行った後に、後期の測定でホウ素-11の中性子捕獲断面積測定を行う。
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