2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400305
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
上原 貞治 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 講師 (70176626)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 衝突型加速器 / 電磁カロリメーター / ルミノシティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究で用いる検出器として輻射バーバー散乱を検出するゼロ度ルミノシティモニターの開発を行っている。それを構成するカウンターのうち、LGSO無機シンチレータを用いたシンチレーションカウンターの部分を新たに検出器体に組み込んだ。そして、そこから発生する信号の形状と自己崩壊の測定をした。ここで、自己崩壊とは、LGSOに含まれる少量の放射性ルテチウムがベータ崩壊を起こして自らシンチレーション光を出すことを言う。さらに、宇宙線を使って、同じ検出器体に組み込んだチェレンコフカウンターと同期を取った同時計測で、時間分解能の測定をした。これらの試験によって、以下のことが明らかになった。 自己崩壊のレートは予想計算とほぼ一致しており、またその信号の大きさは最小電離損失よりも十分に小さいので、使用に格段の問題はない。あるいはこれを較正に利用できる利点として捕らえることもできる。信号の減衰時間が予想より長く、光電子増倍管からの信号が飽和している兆候がある。これについては、光電子増倍管の電圧を変えて確認したが、まだ確定的な理由はわかっていない。現状のままでは信号レートが高い状況では使えないが、加速器の運転初期での使用には問題がない。立ち上がり時間については十分速く、時間分解能はカウンターあたりほぼ1.0nsの目標を達成している。試験においては、宇宙線でのタイミングデータの収集が、検出器からデータ収集、オンライン解析まで一連のシステムとして機能することを確認した。 また、加速器へフィードバックをかけるためにアナログ信号を送る際に用いる積分アンプ、絶縁アンプの製作とこの信号を分析するロックインアンプの性能確認試験をした。結果は良好であった。ほかに、検出器体の設置に向けて、SuperKEKB加速器周辺の設置予定箇所の調査、ケーブルの種類、敷設計画について検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カウンターの製作、電気回路の製作、読み出しを含めた全システムの開発は予定通り進んでいる。ケーブルや実験サイトの準備は、設置場所の検討までは進んだが、物品の調達準備がやや遅れている。この理由はSuperKEKB加速器のビームが出るのが1年ほど遅れたためで、それに合わせて物品の準備を少し待ち合わせたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
検出器体をSuperKEKB加速器の周辺に設置し、データ収集の試験を行う。具体的には、検出器の設置方法の詳細の検討、ケーブルの調達、敷設、検出器の設置を進める。平成28年初めにビームが出る予定なので、そのバックグラウンドの時間構造を測定することを目標とする。加速器の運転の初期には、電子陽電子衝突は起こらないが、ビームパイプ中の残留ガスの原子核による制動輻射からの光子が発生する。この光子が到達する時間構造は、加速器のバンチ構造と厳密に対応しているはずなので、検出器システムの総合的な性能評価を行うことが可能である。 また、無機シンチレータLGSOの信号の減衰が予想より遅い現象が見られるので、その原因究明を行う。これは、測定の初期段階では格段の問題にはならないが、将来的には高レート下での測定に支障が出る。原因を特定した上で、光電子増倍管の変更あるいは、チェレンコフカウンターのみを使う等の対応について検討する。
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Causes of Carryover |
加速器のビームが最初に運転される時期が当初の計画よりも遅れたため、平成26年度に割り当てられていた検出器設置・ケーブル敷設等を次年度に繰り延べることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施を見合わせた検出器設置・ケーブル敷設等のための費用として次年度に使用する。
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