2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400306
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
武田 泰弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 技師 (70391745)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 荷電変換膜 / 高比熱物質 / 高温耐久 |
Research Abstract |
本年度は、ビーム照射に強いフォイルを目指すために、様々な高融点物質を用いた熱計算と、その条件を元に薄膜製膜のための蒸着装置の準備を始めた。 荷電変換フォイルには(1)質量の小さい物質構成、(2)カーリング、ピンホールが無い、(3)ビーム照射に強い、(4)セルフサポートであることが求められる。この条件から、ビーム照射高耐久フォイルの可能性がある物質を見出すために、以下の3点の研究を行った。 1 高融点物質の探索:荷電変換フォイルで使うための原子番号が小さい高融点物質の詳細な熱特性の調査を行わなければならない。代表的な物質には(1)グラファイト、(2)ダイヤモンド、(3)アモルファス炭素、(4)ボロン、(5)ボロンナイトライド、(6)ボロンカーボナイドが挙げられるが、それぞれの物質によって大きく熱特性が違うことから、荷電変換フォイルに適する物質を詳細に調査した。 2 有限要素法解析ソフト(ANSYS)による熱計算:高融点物質の探索によって得られたデータを元にANSYS を使った発熱計算を行った。比較方法としては、物質単体と2 種類以上の物質を混合させての発熱計算により行った。2 種類以上の物質を混合させる場合は、それぞれの平均割合を物性値として用いた。 3 製膜方法の検討と蒸着装置の準備:蒸着方法によってフォイルの構造特性が大きく異なる。熱計算の終わった後にそれぞれの物性に見合った蒸着法の検討を行うと共に蒸着装置の準備を行った。 グラファイト、ダイヤモンド、ボロン、ボロンナイトライド、ボロンカーバイドの物性条件で有限要素法解析ソフト(ANSYS)で計算し、比較検討した結果、比熱が高い物質が熱変動が少なく、発熱温度が低く抑えれることを見出した。すなわち、ボロンが含まれるフォイルの方が炭素の含まれるフォイルよりも発熱温度が低くなる。この比較結果は、約1000ページのデータシート兼報告書として提出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、1 高融点物質の探索、2 有限要素法解析ソフト(ANSYS)による熱計算、 3 製膜方法の検討と蒸着装置の準備をすることが目的であった。高融点物質の探索は文献を調べ、可能性のある高温物質の探求を行った。可能性のある物質でも熱物性値のわからない物質では熱計算が出来ず、断念したものもある。有限要素法解析ソフト(ANSYS)による熱計算は主に知られている、高温物質であるグラファイト、ダイヤモンド、ボロン、ボロンナイトライド、ボロンカーバイドは全て調べ上げ、計算を行った。欲を言えば、他のフォイル製作の可能性がある高温物質の計算を行うことが出来れば、更なる様々な物質の比較検討が行えたかもしれない。だが、初期の目的は十分に達成したと考えている。 次年度に向けて、製膜方法を検討しているが、約1umの非常に薄くセルフサポートの製膜を行わなければならなく、世界ではまだ実現できていない膜もあり、その実現に向け最適な製膜方法を探すのに苦慮している。世界での製膜の開発状況を調べ、最適な方法でのフォイル開発実現を目指すつもりであるが、まだその実現には更なる調査と研究が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
フォイルの熱計算から様々な物質の特徴が得られた。そこで、熱計算によって得られた結果からフォイルの製膜を行っていく。この作製したフォイルはピンホールやカーリングがないことが望ましく、セルフサポートでも耐えられるフォイルである必要がある。もし製膜上で問題がある場合は、蒸着方法やパラメータを改善しながら、最適なフォイルを作る。 熱計算から、比熱がフォイルに発生する熱に大きく影響することを見出した。そこで、フォイルの熱物性値を調べ、フォイルの熱物性値がバルクの値とどのように違いが見られるかを詳細に調べ、必要あれば熱計算を繰り返しながら、発熱温度が高くなりにくく、セルフサポートでも耐えうるフォイルを目指す。 製膜は既存設備で行う。電子ビーム蒸着装置を使用し、ダイヤモンド系物質はナノダイヤモンド薄膜の開発で評価の高いアメリカ・オークリッジ国立研究所のCVD 製膜装置(担当Dr.Z.Show)で行う。製膜の最適化は約1年かかると思われる。 また、比熱がフォイルの発熱温度を下げる重要なパラメータとなることがわかっている。そこで、熱物性値(特に熱伝導率、比熱)を詳細に測定することは非常に重要である。しかし、比熱の測定器は約1000 万円と非常に高価であり、本研究予算での購入は出来ない。そこで、熱拡散率・熱伝導率測定装置を購入し、熱拡散率と熱伝導率から比熱を求めることとする。 最終的にビーム照射試験によって膜の耐久性、耐熱性を確認し、高温耐久性長寿命薄膜の開発を行う。ビーム照射はアメリカ・オークリッジ国立研究所の電子ビーム照射装置の電子ビームで熱による薄膜変形や破損過程の研究を行う(担当Dr.M.Plum とDr.C.Luc)。 この照射試験でビーム照射中の薄膜の挙動を詳細に観察することで、変形やピンホールが形成する過程の調査を始め、破損の少ない長寿命薄膜の開発を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度、蒸着ターゲットを購入予定であったが、蒸着方法の確立までに研究が至らなかったため、本年度に持ち越している。昨年度分は今年度購入予定である。 昨年予定していたマグネトロンスパッタ用ターゲットの購入を行う。購入使用等は昨年度と同じである。
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