2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400306
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
武田 泰弘 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 加速器研究施設, 技師 (70391745)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 荷電変換薄膜 / 高温損傷 / 高電流ビーム / 国際情報交換(アメリカ) |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は約15年間、荷電変換薄膜における粒子ビーム照射ダメージの評価と共に薄膜の長寿命化の研究を行ってきた。荷電変換薄膜は、1)長寿命、2)ビームによる変形がない、3)ピンホールがないことが求められている。また、構成物質は、1)散乱ロスを少なくするために原子番号が小さく、2)ビームによる発熱に耐えられるために高融点でなければならない。このことから、今までは主に高温に耐えられる炭素アモルファス薄膜が使われてきた。しかし、ビーム照射による1800Kもの高温には炭素アモルファス薄膜でも耐えることが出来ず、すぐに破損する。 2005年に我々は炭素薄膜にボロンを混合したHybrid Boron mixed Carbon (HBC)薄膜を発表し、ビーム照射に強く市販薄膜の500倍以上の長寿命化に成功した。しかし、HBC薄膜は高温に強いが表面に多数のピンホールが発生するため、荷電変換薄膜に使用した場合、加速粒子が荷電変換せずに通過することが問題となっている。 そこで、一昨年度から薄膜の温度分布をANSYSにより解析したところ、薄膜の熱伝達には輻射の他に熱伝導率と比熱が大きくかかわっていることを見出した。熱伝導率が約3倍になると約150Kの温度減少を示し、特に比熱が発熱温度への影響が大きく、さらに約4倍になった場合、約250K非常に大きな温度減少を示した。(計算条件:ダイヤモンド薄膜400g/cm2, ビーム 1GeV, 1.5ppp injected over 1ms, 60Hz, 1ms pulse beam, emissivity 0.3) 本年度はさらに様々な高融点物質を組み合わせ、その混合割合を変えた時に発熱温度がどのように変化するか、熱計算をおこなった。しかし、粒径によって熱物性値は変化する。そこで、製作する薄膜の粒径をどのようにコントロールして希望の薄膜作りのための条件を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
26年度はアメリカオークリッジ研究所に滞在し、研究を行っていたため、熱と構造計算を中心に詳しく解析を行っていた。本来であれば、本年度、熱拡散率・熱伝導率測定装置 SIIナノテクノロジー製 ai-phase Mobile 1uを購入し、その計測値から様々なフォイルの熱伝導のデータを得る予定であったが、26年度に予定していた各性能試験を日本に戻ってから行うことにし、延長を行った。27年年度は初めにこの測定を行い、中旬に比較解析を行うことで、遅れは取り戻せると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
熱計算から得られた結果より、セルフサポートでかつピンホール、カーリングのない膜を制作していく。昨年度に最適な蒸着方法を見出してはいるが、様々な条件で変化することが考えられる。そのため、臨機応変に蒸着パラメータを変化させ、最適な膜の製膜を心がける。また、出来上がった膜は熱伝導測定装置や比熱測定装置などを使い、熱物性を測定し、その熱物性と寿命との関係をビーム照射試験で確認する。ビーム試験はアメリカ・オークリッジ国立研究所の電子ビーム照射装置の電子ビームで熱による薄膜変形や破損過程の研究を行う(担当Dr.M.PlumとDr.C.Luc)。一方、高エネルギー加速器研究機構のコッククロフト加速器の陽子ビームで陽子ビーム衝突時における薄膜へのダメージの研究を行う。これらの照射試験でビーム照射中の薄膜の挙動を詳細に観察することで、変形やピンホールが形成する過程の調査を始める。今までの我々の研究から比熱が膜の温度減少に大きな影響を与えていることは明らかである。比熱と温度減少との関係、また寿命との関係を明らかにすることで、今までの様々な荷電変換フォイルがなぜ寿命に変化をもたらしたのか、今後の薄膜成膜の方向性を築く。
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Causes of Carryover |
昨年度購入予定していた熱伝導測定装置は研究代表者がアメリカ滞在だったため研究機器の購入を見送った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度、昨年度購入予定の機器を購入し、研究を遂行する予定である。
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