2013 Fiscal Year Research-status Report
空間反転対称性がない半導体表面に創成されるスピン物性と単原子層超伝導
Project/Area Number |
25400316
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
枡富 龍一 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00397027)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 半導体表面 / 2次元電子系 / 低次元超伝導 |
Research Abstract |
平成25年度は吸着原子が誘起する2次元電子系の研究においては超高真空下での劈開・蒸着による試料作製およびその環境を維持したままで、極低温(4.2K)・強磁場下(14T)での面内電気伝導測定と走査トンネル分光顕微鏡による表面観察・エネルギー分光が可能な装置を用いて測定を行った。実際に研究を行った系はInSb劈開表面上に鉄原子を0.01原子層吸着させたものである。14Tまでの面内電気抵抗測定では複数サブバンドの寄与による量子ホール効果を観測した。また、ゼロ磁場の電気抵抗値と電子濃度から見積もられる電子移動度は11m^2/Vs程度であり、吸着原子が誘起する2次元電子系において最良の試料作製に成功した。走査トンネル分光顕微鏡を用いた実験では、表面観察の結果から鉄原子の密度と安定サイトを評価することができた。さらに、トンネル分光による状態密度の測定から電子散乱に寄与する乱れの大きさを評価するに成功した。 GaAs劈開表面上に作製された単原子層の鉛を用いた研究においては、ヘリウム3冷凍機温度までの冷却に成功し、明瞭な超伝導転移を観測した。さらに面内磁場を印加する実験においてはパウリ限界より一桁近い高い磁場まで超伝導状態が変化しないという驚くべき性質を発見した。一方、Inを用いた単原子層超伝導体では面内磁場の印加に際して、超伝導転移温度に明瞭な低下が見られた。このことからスピン軌道相互作用が特異な超伝導状態の実現に大きく寄与をしていることが示唆される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度は吸着原子が誘起する2次元電子系において電気抵抗測定と走査トンネル分光顕微鏡を用いて測定を行うことであった。吸着原子に鉄を用いた系では測定に成功し、現在、解析と論文作成中であり、おおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は本研究課題の遂行するために、超高真空下での劈開・蒸着による試料作成およびその環境を維持したままで、面内電気伝導と走査トンネル分光顕微鏡を用いた測定が可能な装置の稼動温度を0.3Kまで拡張する。さらに空間反転対称性のない単原子層超伝導体の超伝導秩序関数の情報を得るため、トンネル分光法を用いた実験を開始する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品購入の際、金額の変動による少額の差額が生じた。 次年度の消耗品購入金額に補充する。
|
Research Products
(6 results)