2014 Fiscal Year Research-status Report
構造欠陥に起因したカーボンナノチューブの新たな電子状態とその制御
Project/Area Number |
25400331
|
Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
市田 正夫 甲南大学, 理工学部, 教授 (30260590)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
青木 珠緒(松本珠緒) 甲南大学, 理工学部, 教授 (80283034)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | カーボンナノチューブ / 光学応答 / 赤外光 |
Outline of Annual Research Achievements |
半導体および金属単層カーボンナノチューブ(SWNT)では、赤外光領域に幅の広い吸収帯が半導体、金属SWNT共に現われる。今年度も昨年度に引き続き、この吸収帯の起源を明らかにするために、高純度に分離された半導体および金属SWNT薄膜に電子線を照射し、SWNTに欠陥を導入して、それが赤外吸収スペクトルに与える影響を調べた。測定は、微小領域の赤外光領域の吸収スペクトルを測定するために、SPring-8のBL43IRの顕微赤外分光測定用ビームラインを用いて行った。また、局所的な構造変化を調べるために、顕微ラマン分光を行った。 電子線照射によって、欠陥に起因する1350cm-1のラマンピーク(D band)の強度が増加し、それと共に、赤外吸収帯のピーク位置が高エネルギー側にシフトした。欠陥の密度を欠陥のないSWNT特有に現われる1590cm-1のラマンピーク(G band)とD bandとの比(G/D比)で定性的に見積もり、それと赤外吸収帯のピークエネルギーの関係を調べると、ピークエネルギーはG/D比の逆数に比例していることがわかった。このことは、SWNTに欠陥が導入され、欠陥がない有効的なSWNTの長さが短くなり、それによって赤外吸収帯のピーク位置が高エネルギー側にシフトしたと判定量的に理解することが出来、この赤外吸収帯の起源が、有限長さのSWNTによるアンテナ効果であることを示しているといえる。 また、赤外吸収スペクトルの温度依存を測定した結果、この吸収帯はほとんど温度に依存しないことがわかった。このこともこの吸収帯の起源がエネルギーギャップ間によるものでないことを強く示唆している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
赤外吸収帯の起源を明らかにするために、赤外吸収スペクトルの詳細な測定を行う予定であったが、前期(2014A期)のSPring-8のマシンタイムをとることが出来なかった。後期(2014A期)になって始めて温度変化の測定を行うことが出来始めた。
|
Strategy for Future Research Activity |
2015年度前期(2015A期)のSPring-8のマシンタイムは残念ながらとることが出来なかった。 今後、実験室系での測定に加えて、同様なナノカーボン系であるナノグラフェンや多層カーボンナノチューブについての測定も行い、赤外吸収帯における次元性の問題について調べていく予定である。
|
Causes of Carryover |
昨年度の計画では、申請時に初年度に購入予定であった検出器を今年度に購入予定であったが、実験に使用していたレーザーの高圧発生装置が故障したため、その修理費に使用した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
検出器は使用頻度が高いため、次年度あらためて購入を予定している。
|
Research Products
(3 results)