2016 Fiscal Year Research-status Report
ヘム蛋白質における多体効果の理論研究-放射光分光の視点から-
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25400335
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
田口 宗孝 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 特任助教 (10415218)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 金属タンパク質 / クラスター計算 / 共鳴X線発光分光 / 混合原子価状態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、鉄の多体効果に注目し、物性物理の土俵でヘムタンパク質を電子論的に議論することを主な目的としている。具体的には、放射光分光の物性研究にて成功を収めた数値シュミレーション法をヘムタンパク質に適用し、実験スペクトルと比較することでその様々な機能に関するヘム鉄状態の電子状態を理論的に解明することである。 本研究で上げた具体的な研究項目は、①鉄の多体効果とポルフィリン環の強い混成効果を同等に扱うことができるクラスター模型の構築、②基質分子の可逆的な吸脱着による電子状態変化の機構解明、③ヘム鉄の局所的な構造変化が鉄の3d電子状態に与える影響、の三つであった。
本年度までに、上記の三つの目標を達成するための理論模型の構築は終了し、共鳴X線発光、X線光電子分光、X線吸収分光のスペクトル計算もほぼ終了した。本来は、実験スペクトルとの比較を行いながらパラメーターの調整を行う予定であったが、当初予想していた実験の進展状況が遅れており実行できていない。そこで様々な状況を想定し、パラメーターを様々に振ることで理論から予言するという方向に方針転換し現在論文を執筆中である。 また本研究の派生として、このヘムタンパク質とほぼ同じ状況が混合原子価化合物でも明らかとなった。我々はX線吸収分光スペクトルの理論解析からNaCaCr2O4が負の電荷移動状態と正の電荷移動状態が混在することを明らかにした。この状況は正にヘム鉄に基質分子が吸脱着する際に起きる電子状態の変化に良く似ている。現在その論文をPhysical Review Lettersに投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度まで、プログラムのバグが多数見つかるなどして当初の予定からやや遅れ気味であったが、昨年度中にプログラムのバグは完全に修正された。これによりX線光電子分光やX線吸収分光、共鳴X線発光分光のスペクトルがけいさんできるようになり、上記の遅れを挽回することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、現在執筆を行っている原稿を仕上げ論文を投稿したい。
また、現在の計算プログラムは活性中心を鉄に限らずCoやNiなどの別の遷移金属原子への拡張が容易であるので、Co錯体やNi錯体の計算へと拡張を行いたい。
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