2014 Fiscal Year Research-status Report
導電性高分子の電気伝導機構の解明:極低温電気抵抗とナノスケール電子状態の観測
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25400352
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
西嵜 照和 九州産業大学, 工学部, 准教授 (90261510)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 孝彦 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20241565)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高分子構造・物性 / 低温物性 / 走査プローブ顕微鏡 / 電気抵抗 / 強磁場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では導電性高分子であるポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルホン酸) (PEDOT/PSS)の電気伝導機構を解明することを目的とし,極低温電気抵抗測定と走査トンネル顕微/分光(STM/STS)を行った. PEDOT/PSSの結晶性や配向性を制御する手法として,エチレングリコールなどの溶媒の添加と成膜時における磁場の印加効果を調べた.磁場中成膜法では,PEDOT/PSS水分散液を基板に塗布し,最高10Tまでの磁場中で加熱乾燥させることで薄膜試料を作製した.得られた薄膜に対して,電気抵抗測定,赤外偏光反射測定,放射光X線測定を行った結果,磁場印加方向に垂直にPEDOT高分子が配向し,この方向に高い電気伝導性が現れることが分かった.この結果は,成膜時の磁場印加は,PEDOT鎖の配向性を制御するのに有効であり,PEDOTの結晶性を高めるエチレングリコール溶媒の添加とは異なった観点から薄膜の電気伝導特性を制御できることを示している. コア/シェル構造など,複雑な階層構造を持ったPEDOT/PSSの微細構造と電子状態に関する情報を得るために,走査トンネル顕微鏡(STM)測定を試みた.STM測定にはドロップキャスト薄膜を用い,試料の加工法を検討することで,STM測定が可能になった.その結果,ドロップキャスト膜の表面では粒径20~40nm程度の粒状構造が観測され,粒内で~2nm程度のストライプ構造が存在することが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
エチレングリコールを添加したPEDOT/PSSにおいて,ドロップキャスト法や磁場中成膜法などの試料作製技術が確立した.また,方向性を持たせて薄膜を析出させるエッジキャスト法を試み今後の試料作製の指針が得られた.また,分子レベルの微細構造を明らかにするSTM測定に成功しており,計画通り研究が進んでいるため,「(2)おおむね順調に進展している」とした.
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はPEDOT/PSS薄膜の作製条件として,エチレングリコール溶媒の添加効果,磁場印加効果を調べた.また,得られた薄膜に対してSTM測定を行いPEDOT/PSS薄膜の微細構造が測定可能になった.平成27年は,方向性を持たせて薄膜を析出させるエッジキャスト法で作製された薄膜に対してもSTM測定を行い,電気伝導特性,ナノスケールの微細構造,局所電子状態,などの相関を明らかにする.
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Causes of Carryover |
平成26年度は設備備品の購入はなく,物品費(消耗品)と旅費は予定より少ない額で助成事業を進めることができたことが次年度使用額が生じた理由である.物品費の購入に関にしては納入予定の製品を安価に販売できる業者を選定し,旅費に関しては格安航空券を利用するなどの工夫をしたことによる.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は次年度使用額を用いて実験装置の整備を行う予定である.その他の予算の使用に関しては変更はない.
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Research Products
(8 results)