2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400353
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
阿部 和多加 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (00361197)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 水素化合物 / 圧力誘起金属化 / 高温超伝導 / 第一原理計算 |
Research Abstract |
ゲルマニウムの水素化合物で、最も安定なものはGeH4である。しかし実はこの分子も準安定であり、熱力学的に安定な状態ではゲルマニウムと水素に相分離するとされる。本研究では第一原理計算により、この相分離した状態を圧縮していくと、約175 GPaでGeH3相が現れるとの予測を示した。構造はA15構造、またはそれをやや歪ませたP42/mmc構造、Cccm構造が候補として挙げられる。いずれも金属相であり、超伝導転移温度が100 K程度になるとの見積もりを得ている。特にA15構造の場合、予想される超伝導転移温度は140 Kにも達し、これは水素化合物に関して今まで予測された中でもかなり高い値だ。 GeH3という組成はやや奇妙だが、圧縮状態が化学的性質を変える一例として捉えることができる。また原子核の零点エネルギーを考慮しない場合、GeH3相への転移圧は高圧側へ45 GPaもシフトしてしまう。零点エネルギー(原子核の量子性)が、相分離の形態に大きく影響する系であることが分る。 A15構造をもつ化合物(Nb3Sn、V3Si等)は、1980年代の半ばまで、高い超伝導転移温度(10~20 K)が観測される物質として注目を集めてきた。その後、銅酸化物における高温超伝導の流行などもありA15化合物の研究はあまり行われなくなったが、そのメカニズムは未だにはっきりと分っていない。遷移金属元素を含む典型的なA15化合物と、本研究で調べたGeH3では、当然ながら電子状態は異なる。しかし、どちらも高い超伝導転移温度を与えるという共通点は単純な興味を引く。もう一度、A15構造を詳しく研究する動機づけを与える研究成果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
メタダイナミクス及び分子動力学による構造探索を利用し、高圧におけるGeH3金属相の可能性を示すことができた。また進化型アルゴリズムによる構造探索コードも開発中であり、予備計算として、金属―アンモニア系における圧力効果を解析している。
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Strategy for Future Research Activity |
開発した構造探索コードを活用し、常圧とは異なる組成を含めた広範囲の構造探索を実行する。また金属―アンモニア以外にも、金属元素溶解による水素化合物金属化の可能性を探る。
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Research Products
(2 results)