2013 Fiscal Year Research-status Report
巨大応答を示す系における不均一ドメインパターンのスケーリング
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25400355
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業センター(利用研究促進部)) |
Principal Investigator |
松浦 直人 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び東海事業, その他部局等, 副主任研究員 (30376652)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 巨大応答 / 不均一構造 / 自己相似性 / フラクタル次元 / 中性子小角散乱 / リラクサー強誘電体 |
Research Abstract |
わずかな外場で非常に大きな誘電・圧電応答を示すリラクサー強誘電体や超巨大磁気抵抗現象を示すマンガン酸化物ではナノメータースケールの不均一なドメイン構造が共通して観測されている。本研究ではこれまで単に不均一と片付けられていた複雑なドメインパターンから、自己相似性を抽出し定量化することを目的としている。まず、初年度においては、空間相関における自己相似性の検証するため中性子小角散乱を用いた実験を行い、リラクサー強誘電体PMN-PT系において世界で初めて自己相似な空間相関に伴うシグナルを観測することに成功した。自己相似な空間相関は、その中性子散乱強度が波数ベクトルのベキ乗に従って変化するが、このベキ乗の指数から自己相似性の特徴的な因子であるフラクタル次元を抽出できる。フラクタル次元は、高温から温度を下げるに従い1から徐々に増加し、低温で3に近づく振る舞いが見られた。この温度変化は、巨大応答を生み出す局所的なナノ分極クラスター領域が温度降下とともに増大し、そのつながりが、線状(1次元的)から面状(2次元)、そして結晶全体(3次元)へと変化している事を示している。興味深いことに、最も外場への応答が大きくなるのはナノ分極領域が面上につながっている「フラクタル次元が2付近」であり、ナノ分極領域が結晶の隅々を埋め尽くす、「フラクタル次元が3」の状態では逆に応答は小さくなる。この発見は、巨大応答を生み出す上で不均一構造がもたらす、相関の“すき間”が重要な役割を果たすことを意味しており、機能性材料物質の研究に一つの大きな指針を与える発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は以下の研究計画から構成される。 ①空間時間相関における自己相似性の検証:小角散乱により不均一ドメインパターンの波数(Q)依存性を測定 ②時間相関における自己相似性の検証:中性子背面反射、中世スピンエコー装置により相関のエネルギー依存性を測定。 ③不均一相から均一相へのドメインパターン変化の研究 初年度は計画①の空間相関における自己相似性を調べることを目的とした。リラクサー強誘電体の不均一ドメイン構造について中性子小角散乱を用いて測定し、空間相関における自己相似性を検証することが出来た。概ね研究は順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度は、リラクサー強誘電体の不均一ドメイン構造について、その空間相関を調べることができたが、もう一つの対象である超巨大磁気抵抗効果を示すペロブスカイト型マンガン酸化物における自己相似性の検証は、東日本大震災の影響により日本の研究用原子炉が停止していたため、実験を行うことが出来なかった。(リラクサー強誘電体の中性子小角散乱実験は予定を変更し、急遽、韓国において行っている。)2年目となる本年度は、外国の中性子施設も積極的に活用して、マンガン酸化物における中性子小角散乱実験を是非、実行したい。また、計画の第2段階である、揺らぎの自己相似性についても、平行してJ-PARC、SNSなどの世界最先端の中性子ビーム実験施設を用いて研究を進めていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に得られた成果について、投稿論文の準備を行い、英文校正費用として計上していたが、論文の執筆が年度内には終了しなかったため。 初年度から進めている、単結晶育成、中性子散乱実験と平行して、論文の執筆・発表を次年度に行っていく。
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Research Products
(2 results)