2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400358
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
鴻池 貴子 独立行政法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 独立研究者 (70447316)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ディラック電子 / 有機導体 / 熱伝導度 |
Research Abstract |
本研究ではバルク結晶でありながら圧力下でグラフェンと同様の線形分散を持つことが知られている有機導体を対象として圧力下熱伝導度測定を行い,ディラック電子系特有の熱伝導の振る舞いを実験的に明らかにすることを目的とする. 本研究はグラフェンでは正確な測定が困難な熱伝導度測定をバルク結晶としてディラック電子系を実現した有機導体を用いて行おうとするもので,圧力下熱測定のなかでも極めて困難な熱伝導度測定技術を開発するという点において大きな技術的挑戦でもある. 初年度であるH25年度は,本研究の対象となる有機導体alpha-(BEDT-TTF)2I3の単結晶試料の作製を行った.まず2つの原料(BEDT-TTF, TBA-I3)をそれぞれ再結晶により十分に精製し,蒸留した有機溶媒中に溶解して電解法により単結晶を作製した.これにより鏡面光沢のある黒色・板状の良質な結晶を得ることができた. また,本物質では15kbar以上という高圧力を加えることによってはじめてディラック電子系が実現するため,実験は高圧下で行う必要がある.加圧にはクランプ式の圧力セル(試料空間内径4 mm)を用い,試料の熱伝導度測定に必要な温度計や圧力ゲージの電気信号を取り出すためのフィードスルーの作製を行った. また,本物質ではディラック電子系特有のランダウ準位を反映して磁場下で特異な磁気抵抗効果と巨大なネルンスト効果が発現する事がすでに分かっている.熱伝導度の測定においてもこれらの現象と関連する特異な振る舞いが期待されるため,磁気抵抗・ネルンスト効果についての測定を行った.これにより,以前の報告を良く再現する詳細なデータを得ることができた. 次年度以降は本試料に関して温度計を複数個設置することにより熱伝導度の測定を試み,ディラック電子系特有の熱伝導の振る舞いを実験的に調べる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度において,研究対象となる有機導体の良質な単結晶作製に成功し,圧力下熱伝導度測定の準備を進めているところである. また,本研究課題に深く関連する磁気抵抗や熱起電力の測定を行い,詳細なデータを得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
高圧下の測定に有利な交流法による熱伝導度測定法を利用した測定準備を進める.その際,通常のac法の他3omega法などを試み,より感度の高い測定方法を模索する. その後,初年度に作製した単結晶試料と高圧測定用フィードスルーを用いて高圧下有機導体における熱伝導度測定を行い,ディラック電子系特有の熱伝導の振る舞いを実験的に調べる. また,現在さまざまな物質においてディラック電子系の存在が議論されているため,これらについての情報収集や他のグループとのディスカッションを行うため,関連する研究会や国際会議に出席して発表・議論を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
所属先がかわることになったため,装置等の購入を次年度に延期したため. (元所属先:東京大学物性研究所,現所属先:物質・材料研究機構) 本研究課題に必要な装置・器具の購入や,関連する研究会・会議への旅費等に使用する.
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Research Products
(8 results)