2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400359
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
常次 宏一 東京大学, 物性研究所, 教授 (80197748)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 年裕 独立行政法人理化学研究所, その他部局等, 研究員 (70648683)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 動的相関関数 / モット転移 / 熱伝導度 / 強相関電子系 |
Research Abstract |
平成25年度は反強磁性相転移近傍の伝導度計算のためのプログラム整備を行った。4サイトのクラスターへの拡張および、磁気秩序が存在する場合への一般化を行った。また、モット金属絶縁体転移近傍の局所物理量の動的相関関数、特に二重占有と無占有を表わすダブロンおよびホロンの2種類の素励起のダイナミックスを研究した。そのためにクラスター動的平均場法を用いて、同一サイト上および隣接サイト間のダブロン同士の相関の時間依存性および周波数依存性を計算した。金属相においては、零周波数付近に非常にシャープなコヒーレントピークがありこれが非常に長時間の二重占有数の揺らぎをもたらすが、絶縁体相においてはコヒーレントピークが消失し二重占有数の揺らぎが短時間に限られることを発見した。また、従来の変分モンテカルロ法に基づく研究でモット転移においてその重要性が指摘されていた隣接サイト間のダブロンとホロンの相関に関して、動的相関の計算を新しく行って揺らぎの効果を詳しく研究した。その結果、隣接サイト間においてはダブロン同士には斥力、ダブロンとホロンの間には引力が働き、これらの相互作用は絶縁体側で大きくなるが、ダブロン間の斥力の増大に比べてダブロンとホロンの引力の増大が非常に大きくなることを発見した。 また、2次元正方イジング模型の熱伝導度の温度変化について予備的結果を得た。Creutzの提案した方法を用いて、熱浴の役割を果たすデーモンを各サイトにおいてイジングスピンと結合させ、マイクロカノニカルなモンテカルロ計算により温度および熱流を同時に測定し、熱伝導度の温度変化の概要を求めることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初に計画していたクラスター動的平均場プログラムの拡張を予定通りに行った。また、ハバード模型のモット転移に特徴的な動的相関関数の数値計算を行い、金属領域と絶縁体領域における特徴的な振舞の相違点を明らかにすることができた。この計算においては、クラスター動的平均場法の結果を用いた高精度の解析接続を行うことが必要であるが、動的平均場法の虚数周波数データの誤差を抑えると共に解析接続のパラメータの最適化によりこれを実現した。また、実時間領域の相関関数の計算のためのフーリエ変換においていくつかの工夫をおこない、高精度の結果を得ることに成功した。さらにイジング模型の熱伝導度の温度変化の予備的結果を得ることができた。この計算においては、熱浴の役割を果たすデーモンとしてどのようなものを用いるかが重要となる。模型の対称性に応じて、いくつか異なるデーモンの場合のプログラムを開発し、計算速度と計算精度の吟味してプログラムの効率化を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の1つのテーマは反強磁性転移における電気伝導度の特性の研究である。このためにハバード模型に対して反強磁性秩序と整合するクラスター動的平均場近似を行い、反強磁性転移温度を決定して、その近傍における電気伝導度を計算してその臨界指数を決定することを目指す。また、頂点補正を取り入れることにより電気伝導度がどのように変化するのかを調べ、局所的な多体効果が伝導現象に及ぼす影響を研究する。また、電気伝導の特異性が磁気フラストレーションとどのような関係にあるのかについて詳細な検討を行う。そのために、長距離電子ホッピングを模型に導入して磁気フラストレーションのコントロールを行い、磁気揺らぎと電気伝導度を同時に計算してそれらを比較し、磁気揺らぎと伝導特性がどのように相関しているのかという重要な問題に取り組む。 2つめのテーマは磁性絶縁体に対応するスピン系の熱伝導の研究の継続である。前年度開発したデーモン法のプログラムを改良して更なる高速計算を行い、スピン系の相転移臨界点の近傍で伝導現象がどのような特異性を発現するかについて研究を行う。1つの課題はフラストレーションが伝導現象におよぼす影響である。特に、ハバード模型の場合と比較して、電子系とスピン系の相違点を明らかにすることを目指す。 また、電子系やスピン系が相転移臨界点で示す伝導現象の特性を記述できるような現象論の構築を目指す。そのために動的繰込み群的なアプローチを用いた検討をする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度に予定している反強磁性相転移点付近の伝導度計算のためのプログラム開発を行い、予備的計算を行った結果、当初の予想より計算量が増大する見通しとなったため、全体として次年度の計算費を増額するために繰越を行うこととした。 数値計算のための計算機使用料および資料収集・成果発表のための会議参加の旅費として用いる予定である。
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