2013 Fiscal Year Research-status Report
希土類化合物における競合的混成効果と磁性および多極子状態の理論的探求
Project/Area Number |
25400362
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
椎名 亮輔 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (30326011)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スクッテルダイト / サマリウム / 金属絶縁体転移 / 反強磁性秩序 / 電荷秩序 / 磁場 / 四極子 / 電気分極 |
Research Abstract |
25年度は、Smスクッテルダイト特に異常な秩序状態を示すSmRu4P12の解析を行った。Smの4f状態に対して現実的なpf混成に関する摂動計算により、有効ハミルトニアンを導いた。f軌道に強く依存した混成によって、伝導電子とf電子の有効相互作用には、磁気相互作用のみならず電荷相互作用も現れる。この点は、類似物質のPrRu4P12と同様であるが、その相互作用が同程度の大きさであること、また反強的相互作用であることなど、相違点があることが分かった。このモデルでは、バンドネスティングの存在により、無磁場では反強磁性状態が安定化することが予想される。そこで、有効ハミルトニアンに対して平均場近似を適用し、磁気秩序状態に対する磁場効果を調べた。その結果、1)転移温度近傍の反強磁性相において磁場により急激に電荷秩序が誘発されること、2)磁気・電荷相互作用の競合効果を反映して低温では電荷秩序の共存が強く抑えられること、3)秩序化によるバンドギャップの形成が、磁性・電荷の共存状態の形成によって磁場中で大きく低温にずれること、4)それらに伴う種々のバルク物理量の温度磁場変化が、SmRu4P12において観測された実験結果と良く符合すること、を指摘した。 マルチフェロスピン系Ba2CoGe2O7の解析も行った。この系のCo2+のスピンは、酸素の4面体構造により囲まれるため、スピン四極子が電気分極と等価となる。この点に着目し、通常の反強磁性相互作用に加えて、分極間相互作用を有効四極子相互作用として考慮し、それらをボソン化の手法によって扱った。その結果、中性子非弾性散乱に現れる励起ギャップと磁化測定における異方性が定量的なレベルで再現出来ることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Smスクッテルダイトに対する解析について、平均場近似の解析を進めて行くなかで、磁性・電荷の共存状態が低温で急激に乖離することを発見した。これは、当初予期出来なかった観点であり、同時にSmRu4P12の磁場下で現れる異常を非常に自然に説明するシナリオでもあることが分かった。この意味で、Sm系に対する研究はおおいに進展があったといえる。一方、Sm系への取り組みを優先した結果、スクッテルダイトにおける多バンド効果の解析が遅れていることも付記する。
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Strategy for Future Research Activity |
Smスクッテルダイトについては、磁場および結晶場分裂の広いパラメータ領域に対して平均場解析を進め、圧力効果や置換効果の実験との比較研究を進める。また、平均場からの揺らぎを考慮することにより、磁性・電荷の共存状態に置ける輸送特性について解析を進める。 また、スクッテルダイト系全般の理解へ向けて、pfおよびdf混成効果をともに考慮した簡単なモデルを導入する。具体的には、f電子を古典磁気モーメントとして近似する一方、現実的なp、dバンドとの交換相互作用からなる2バンドモデルの解析を行う。
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