2015 Fiscal Year Annual Research Report
希土類化合物における競合的混成効果と磁性および多極子状態の理論的探求
Project/Area Number |
25400362
|
Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
椎名 亮輔 琉球大学, 理学部, 教授 (30326011)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 軌道自由度 / 混成 / 希土類 / 相転移 / 磁性 / 電荷 / 磁場 / 結晶場 |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画は、スクッテルダイトおよびその関連物質において、伝導電子とf電子の混成に起因するフラストレートした秩序状態の探求を目指したものであった。その過程で、長年実験理論両面で問題になっていたSmRu4P12の磁場中秩序状態が、新奇な磁性・電荷共存相の考え方により良く説明出来ることを、有効ハミルトニアンに基づく解析により見出した。その際に提案された電荷秩序変数が広島大の松村らによるX線回折実験により観測され、その反射強度の磁場温度変化が、理論による秩序変数のそれと大変良く一致することが示された。 最終年度は、特に伝導バンド状態と輸送特性の解析に取り組んだ。平均場解に基づいて準粒子状態密度を計算し、磁場中のII相での電荷秩序変数の混合および干渉効果に伴って、フェルミ準位近傍のスピン変極が著しく見られるハーフメタル状態へと変化してゆくことを明らかにした。そのうえで、秩序状態における輸送方程式を定式化して、緩和時間近似を適用して輸送特性を調べた。磁場とともに転移点直下の抵抗率が大幅に減少し、抵抗率においてI-II相境界での金属絶縁体転移の特徴が失われて行くこと、低温のII-III相境界近傍で抵抗増大が顕著になることなどを示した。これらは、松平らの多結晶および最近の伏屋らの単結晶による実験結果と整合する計算結果である。スピン伝導についても輸送方程式を用いて調べ、II相領域でスピン伝導度が著しく増大し、鋭い極大を示した後、低温では強く減衰することが分かった。これらの結果は、磁性・電荷共存状態に特徴的なスピン分極キャリアの伝導特性を示しており、実験的検証が待たれる。 また、III相の低温領域の熱力学量に関連して、近藤格子のスピン波の解析を行った。通常の反強磁性とは異なる非線形分散が現れること、それが伏屋らの低温実験の結果を良く再現することなどを示した。
|
Research Products
(2 results)