2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400366
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川上 則雄 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10169683)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | トポロジカル絶縁体 / 電子相関 / モット絶縁体 / 冷却原子 / スピン軌道相互作用 |
Research Abstract |
本研究は、強相関系効果とトポロジカルな性質が生み出す新奇な量子凝縮相の理論的な解明を目的としている。本年度は主に、強相関固体電子系に関する研究と冷却原子系に関する研究を並行して行なった。 (1) 強相関電子系における多体効果とトポロジカル現象 強相関電子系における結晶構造(空間的トポロジー)の特殊性に起因する新奇現象の解明を行なった。強相関系の典型例として近藤格子系を扱い、磁気的相互作用による電荷秩序相の出現を見出した。また、超格子構造に起因する「近藤しみだし効果」を見出し、これを用いて層状構造をもつ重い電子系のSTMスペクトルを説明した。さらに、準一次元トポロジカル超伝導体のMajorana端状態に対する準周期ポテンシャルの効果を明らかにした。 (2) 冷却原子系での強相関トポロジカル量子相 上記の固体系では量子パラメタの制御に限界があるが、これを補う形で冷却原子系に研究を展開した。まず、光格子で作成された通常のバンド絶縁体が光で周期的に駆動することでトポロジカル絶縁体に変化することを提案した。ここでは人工的ゲージ場によるスピン軌道相互作用に加えラビ振動が本質的な役割を担う。また、光格子系中の引力フェルミ系の超流動と乱れの効果についても考察し、乱れによって誘起される超流動転移を調べた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の達成度としては、当初予定していた程度に研究を進めることができたものと考えている。これらの研究成果は、6編の原著論文として出版し、2編の投稿中論文としてまとめている。また、多くの国内外の会議・研究会でも成果報告した。 研究内容に関しては、当初の計画を超えた成果が得られたテーマがある一方で、当初の計画ほどは進まなかったテーマもある。前者は、冷却原子系でのトポロジカル相転移に関する研究である。このテーマはもともと26年度に実行する計画であったが、予想以上に研究が進み「ラビ振動によるトポロジカル相転移」という新しい現象を見出すことができた。 固体中のトポロジカル相転移に関して、1次元のトポロジカル超伝導におけるMajorana端状態に対する新しい現象を見出すことができたことは大きな進展である。一方、当初予定していた3次元トポロジカル絶縁体への電子相関効果には研究を展開することができなかった。それに代わって、超格子構造をもつ強相関電子系に対して、空間的なトポロジーに起因する「近藤しみだし効果」を提案し、希土類化合物の実験を説明できたことは大きな収穫であった。 これらの成果を総合して、当初の予定していた程度の研究が進められたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は固体電子中の強相関効果とトポロジカルな性質の研究を進めるとともに、冷却原子系にも研究をある程度展開した。26年度以降も、固体電子系における強相関とトポロジーに起因する現象の研究を継続する。 現在、トポロジカル電子系の実験が急速に進んでいるので、最新の実験結果を取り入れ具体的な研究を進める予定である。また、26年度は、冷却原子系における新奇なトポロジカル量子凝縮相の研究に重点をおく。理想的な人工格子系として冷却原子系の光格子も、トポロジカル量子相を理解するには欠かせないものとなっている。これまで相互作用の制御で超流動転移やモット転移などの量子相転移が観測されてきたが、磁場、電場、スピン軌道相互作用などの「人工的ゲージ場」が実現されたことにより、トポロジカル絶縁体などの量子凝縮相が実現可能な段階にきている。スピン軌道相互作用、原子間斥力・引力の強さを変えた際に現れる量子相転移、クロスオーバー現象を解明する。 さらに、冷却原子系では空間的・時間的乱れを自由に調節できるようになっている。トポロジカル絶縁体への相関効果に加え空間的・時間的乱れの効果の系統的研究を行う。冷却原子系の研究を通して、トポロジカルエッジ状態の空間的・時間的乱れに関する安定性を明らかにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度、外国出張旅費を計上していたが、出席した国際会議が日本で行われたため、来年度以降に経費を回した。また、パソコンを購入予定にしていたが、来年度の成果報告に多くの学生が研究会に出席予定なので、出張旅費にあてる予定である。 次年度以降は、国内外の会議や研究会が多く予定されているので、大学院生も含めて積極的に参加して、研究成果を発信してゆく。
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Research Products
(27 results)