2013 Fiscal Year Research-status Report
電場誘起表面超伝導の局所電子状態解明と物性評価の理論研究
Project/Area Number |
25400373
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
市岡 優典 岡山大学, 自然科学研究科, 教授 (90304295)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 物性理論 / 表面・界面物性 / 低温物性 / 超伝導材料・素子 / 量子閉じ込め |
Research Abstract |
電場誘起表面超伝導はバルクの超伝導とは異なる特性を持つ。このことを具体的に明らかにするため、また、表面超伝導の物性の定量的理論評価を可能とするため、この系の局所電子状態と物性について微視的理論計算手法の開発に取組んだ。本年度は、Bogoliubov-de Gennes方程式を数値的に解くことにより、表面付近に束縛された電荷分布や超伝導秩序変数の局所的な空間構造が決め、局所電子状態密度を計算することにより超伝導ギャップ構造の空間変化などを評価する手法を発展させ研究を進めた。 まず、超伝導の深さ方向の電子状態や超伝導状態の空間変化の評価と、サブバンド依存の多ギャップ超伝導の特徴に注目した。これらの電子状態の特徴におけるゲート電圧依存性を解明するため、表面での電場の値や誘起される電荷密度に対する依存性を本研究で開発した理論手法で計算して評価し、表面超伝導の超伝導空間構造がどのように変化するか考察した。表面に誘起された電荷による電場遮蔽の効果も考慮し、この遮蔽効果により、電荷分布や超伝導が奥方向により深く侵入する様子も明らかにした。また、SrTiO3のように多軌道系で複数バンドを持つ場合にも適用できるよう計算手法の改良を行った。 ついで、実験研究の動向などを考慮し、次年度以降に実施予定であった磁場依存性の研究を今年度から開始することとした。磁場を面に平行にかけた場合を想定し、ベクトルポテンシャルを導入してBogoliubov-de Gennes方程式を解く手法を開発した。これにより、印加磁場の大きさにより、表面電子状態や超伝導状態がどのように変化するか調べ、局所電子状態の変化などを考察した。磁場によりサブバンドの状況が変化する様子や、これが超伝導に影響する様子などの特徴などを解明することができ、今後の発表に向け、成果の取りまとめをしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における計算手法の開発としては順調に進んでいる。Bogoliubov-de Gennes方程式を数値的に解くことにより、表面付近に束縛された電荷分布や超伝導秩序変数の局所的な空間構造を決定し、局所電子状態密度を計算する計算手法は、ほぼ完成し、具体的に表面での電場の値や誘起される電荷密度を決めて計算を実施する段階にある。さらに、この手法を面に平行に磁場を印加した場合に適用できるように発展させ、磁場下の電子状態を計算できるようにしたことは重要な成果だと考えている。 今年度は、計算データは多く得られたものの、その結果において当初の予想とは異なる現象が見つかり、物理的解釈などの検討に時間がかかった。そのため、年度内に成果発表までは至らなかったことは反省点である。次年度には磁場依存性などの成果をまとめ、成果発表する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で計算データを得ている電場誘起表面超伝導のゲート電圧依存性や磁場依存性について、引続き研究を進め、必要な計算データの取得と考察を行う。これにより、ゲート電圧で変化する表面での電場の値や誘起される電荷密度に対する依存性を解明し、局所電子状態のスペクトルの変化などを通して、電場誘起超伝導体の物性におけるゲート電圧依存性を考察する。また、磁場によるサブバンド構造の変化などに注目し、超伝導の様子や超伝導状態での局所電子状態のスペクトルの磁場依存性などを明らかにする。これにより、電場誘起表面超伝導の特性を調べる有効な手段の一つとして期待される磁場下の物性研究に対して、理論研究の舞台を整備していく。そして、これらの成果を取りまとめ、物理学会等での発表や学術雑誌への掲載など、成果発表も積極的に進めて行きたい。また、異方的超伝導機構やスピン軌道相互作用を考慮した理論計算手法の開発にも取組む。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は初年度ということもあったが、計算データの物理的解釈の検討に時間がかかり、年度内に成果発表をする機会を持てなかった。そのため、成果発表のための学術雑誌投稿料や学会等参加の旅費が支出できず、繰越となってしまった。また、数値計算用のコンピューターの購入については、本年度は導入候補の新機種の発売が年度の後半にあったため購入金額が確定できなかった。結局、当初見込みより、性能は良いが購入金額をやや安くすることができたことも繰越の一因である。 次年度においては、成果発表を積極的に行うことを予定しており、学術雑誌投稿料(英文校正費を含む)や学会発表旅費などの成果発表経費の支出を見込んでいる。また、コンピューター購入については、本年度購入の機器の性能の確認を踏まえ、次年度においても数値計算を効率的に実施できるよう、数値計算用のコンピューターの購入を行う計画である。また、コンピューター関連の消耗品の支出も予定している。繰越金は、これらのコンピューター購入費および成果発表経費の一部にあてる予定である。
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