2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400381
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
赤浜 裕一 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 教授 (90202522)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 固体水素 / 高圧相 / X線構造解析 / 金属化 / ラマン散乱 / 超高圧 / 放射光 / ダイヤモンドアンビル |
Research Abstract |
最近,Max-Planck研究所のM. Eremetsらにより室温,270 GPa程で水素の金属化が報告され話題になっている。その後のラマン散乱及び光学吸収実験そして赤外吸収実験による追試から,固体水素はこの圧力では未だナローギャップ半導体的な振舞いを示すことが明らかとなったが、金属水素の実現は今や目と鼻の先に迫っている。固体水素III相においてはバンドオーバラップによる分子性(半)金属状態が実現すると考えられる。それゆえ,水素の金属化を電子論的に理解する上で,III相の結晶構造の解明は喫緊の課題となっている。 本研究では,固体水素III相の構造と物性に関する知見を得る目的で,超高圧低温下でX線回折とラマン散乱実験を行った。 低温粉末X線回折実験はSPring-8の単色マイク集光ビームとキュレット径100 μmのダイヤモンドアンビルを用いた角度分散法で行い、固体水素の回折データを200 GPaまで収集できた。観測された2本の回折線のd値は、我々がこれまで蓄積したd値の圧力依存性の結果と良い一致を示した。また、低温ラマン散乱実験ではHe-Neレーザーを励起光源とし,キュレット径20 μmのダイヤモンドアンビルを用い、水素分子のvibronとlibronモードを300 GPaまで測定し、250 GPa程で、分子の回転運動の凍結に対応するとみられるlibronモードの分裂を初めて観測した。 一方、我々の超高圧発生技術を試す目的で、単体テルルの330 GPa領域までの粉末X線回折実験を行い、255 GPaでfcc構造の高圧相を発見した。また、固体水素との比較を目的に、同じ軽元素である等核二原子分子O2とN2二元系の高圧相の構造とその物性を調べ、純粋な固体酸素では現れないカゴメ格子を組む磁気秩序を初めて観測した。これらの成果は、現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水素は元素の中で最もX線の散乱能が低くこれまで100GPaを超えるX線回折実験は困難と考えられていた。今回、超高圧下での固体水素の回折データを200 GPaまで収集することができ、加えてさらなる超高圧領域へ実験を拡張し、固体水素高圧相IIIの構造解明の目途がついた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、液体窒素冷却Siモノクロメータを用い250 GPaまでの回折実験を計画中である。また、ラマン散乱実験では、固体水素III相におけるlibronモード分裂の再現性を確認するための再実験を行う。
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Research Products
(3 results)