2014 Fiscal Year Research-status Report
スピン液体-金属相転移の圧力制御によるスピン液体相の解明
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25400384
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
宇治 進也 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (80344430)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピン液体 / 磁気トルク / 磁化 / 三角格子 |
Outline of Annual Research Achievements |
S=1/2のスピン液体候補物質である有機磁性体H-3(Cat-EDT-TTF)2の磁性をSQUID磁束計およびマイクロキャンティレバー法により詳細に測定した。特に、キャンティレバー法では50mKまでの極低温、17Tまでの強磁場領域で測定した。その結果、全測定範囲で、磁化が磁場に比例する(磁化率が温度に依らない)ことを見出した。特に、約3K 以下50mKまで磁化が温度に依らず一定となるという事実は、このスピン系が極低温まで長距離磁気秩序を持たないことを意味する。この系でのスピン間の反強磁性相互作用Jは約100Kであるので、T≒J/2000の低温まで常磁性であり、この系がスピン液体物質である事を磁気的測定から初めて明らかにしたことになる。 約3K以下での磁化率は1.2x10-3emu/molであり、この値は他のスピン液体物質EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2 よりも約3倍大きい。一方Jはこの系が1/3程度となっているので、スピン液体物質で、磁化率/Jがほぼ一定となっていることが明らかとなった。この事実は、スピン液体物質でJが唯一のスケールとなっていることを示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マイクロキャンティレバー法を用いることで、分子性有機結晶のような微小な単結晶一つの磁気トルクを、極低温強磁場で精密に測定することが可能となった。本研究により、広い温度・磁場範囲で、精密に磁性を測定し議論することが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
今回、有機磁性体 H-3(Cat-EDT-TTF)2の磁性をSQUID磁束計およびマイクロキャンティレバー法により詳細に測定し、他のスピン液体物質EtMe3Sb[Pd(dmit)2]2 と比較することで、磁化率/Jがほぼ一定となっていることを明らかにした。これが、スピン液体物質で普遍的な性質となっているかどうかを明らかにするため、さらに他のスピン液体物質を探索したい。 また、スピンの自由度は磁場により制御されるため、磁気熱量効果の測定を行い、スピンのエントロピーがどのように磁場・温度変化するのか調べ、スピン液体の本質に迫りたい。 さらに、圧力効果の測定も引き続き挑戦する。
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Research Products
(8 results)