2014 Fiscal Year Research-status Report
多成分超伝導における時間反転対称性の破れた状態の新奇物性
Project/Area Number |
25400385
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
胡 暁 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, その他 (90238428)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | multiband superconductor / time reversal symmetry / Josephson junction / SQUID / fractional flux |
Outline of Annual Research Achievements |
多成分超伝導において成分間に斥力が働く場合、位相差が非自明な値をとり、磁場がなくても時間反転対称性の破れた状態が現れる。本年度この特異な超伝導状態について次の結果を得た。 (1)時間反転対称性の破れた状態を実験的に確認できる方法と一つとして、従来型の単一成分超伝導とのジョセフソン接合を考えた。ジョセフソン超伝導臨界電流が電流方向によって異なることを理論的に明らかにした。すでに発表された鉄系超伝導体の実験結果との比較を通じて、時間反転対称性の破れた超伝導状態が鉄系超伝導ですでに実現されている可能性を指摘した。 (2)時間反転対称性の破れた超伝導状態はカイラリティの異なる状態の2重縮退を持つ。それらがSQUID構造に同時に存在する場合、SQUIDに囲まれた磁束が磁束量子の分数分になることを理論的に解明した。SQUIDの磁化曲線に分数磁束プラトーが複数個現れ、それぞれの値は物質パラメーターや温度によって変わりえる。しかし、プラトー間の和が磁束量子になることも突き止めた。この性質はこの新規な超伝導状態の確認に役立つ。 以上の二つの理論提案はいずれも位相敏感な特性であり、超伝導現象の本質を捉えている。これらの研究成果は超伝導位相の操作に新しい方向性を示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の目標は鉄系及び関連物質における時間反転対称性の破れた超伝導状態の発見及び新しい量子機能の探索に設定している。本年度の研究において、ジョセフソン接合における非対称ジョセフソン臨界電流、SQUIDの磁化曲線における分数磁束量子プラトーを解明した。いずれもこの特異な超伝導状態の位相敏感な特性であり、今までのに確立された超伝導理論では理解不可能な現象である。我々の研究により、超伝導位相を司る新しい道が示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は実験的にこれらの現象を観測できるように鉄系超伝導や関連物質の同定を行う予定である。
|
Research Products
(5 results)