2015 Fiscal Year Annual Research Report
多成分超伝導における時間反転対称性の破れた状態の新奇物性
Project/Area Number |
25400385
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
胡 暁 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点, 主任研究者 (90238428)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | multiband superconductor / time-reversal symmetry / flux quantum / fractional flux |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度時間反転対称性の破れた超伝導体が作ったループの磁化曲線について調べた。ループの右半分と左半分がそれぞれ異なるカイラリティを示す超伝導状態になっている状況をレーザー照射等の実験的な手法で実現できたとする。2つの異なるカイラリティを持つ状態はそのままでは繋がることができず、超伝導ループに2つのドメインウォール(DW)が現れ、それぞれのDWにおいて、三つの超伝導成分の中の2つの成分間の位相差が逆転する。位相逆転を起こさせる超伝導成分が2つのDWで異なる場合、超伝導体ループに囲まれる磁束が磁束量子の分数分になることを突き止めた。これは系の磁化曲線に分数磁束量子ステップが表れることを意味し、実験で容易に観測できる。分数磁束量子の値自身は物質パラメータや温度によっても変わり得るが、ステップは必ず対で現れ、その間は磁束量子の整数倍で結ばれている。この現象は、単一成分超伝導、二成分超伝導や時間反転対称性の破られていない三成分超伝導には見られないことも明らかになっている。このため、この現象は時間反転対称性の破れた超伝導状態の特有な性質であり、その検証に利用できる。今後の実験研究が期待される。
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