2015 Fiscal Year Research-status Report
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25400387
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
佐々木 志剛 神奈川大学, 工学部, 准教授 (80400282)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ガラス / エルゴード性の破れ / 格子ガラスモデル / 非平衡ダイナミクス / エイジング / 位相空間分割転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
最初に、ランダムグラフ上のBiroli-Mezard(BM)格子ガラスモデルにおける位相空間分割転移に関する研究結果を論文に纏め、学術雑誌(JPSJ)へ投稿した。同論文は掲載が決定しており、現在印刷中である。
また、BM格子ガラスモデルに対し、外場とそれに応答する物理量を導入した。これらはスピングラス等の磁性体における磁場と磁化に相当する量である。そして、同モデルの非平衡状態における外場への応答を調べるためのプログラムを作成した。格子ガラスモデルでは粒子配置に関する制約があるため、通常の方法で粒子配置の更新を行ってもなかなか受理されないという問題があるが、このプログラムはイベントドリブン・モンテカルロ法で実装しているため、粒子配置の制約が厳しくなる低温・高密度領域になるほど高速に動作するという特徴がある。そのため、例えば現在行っている磁場中冷却磁化の測定に対応するシミュレーションでは、系のミクロなタイムスケールを単位として、10の10乗オーダーの長時間領域の測定が可能である。スピングラスなどの磁性体では、スピン反転時間が系のミクロなタイムスケールに対応し、それはおおよそ10の-12乗秒のオーダーなので、スピン系で考えるとこれは0.01秒のオーダーに相当する。
今後の研究ではこの特徴を活かして、これまでのスピングラス等でのシミュレーションでは困難だった、実験に近い長時間スケールでの非平衡ダイナミクスの研究に取り組んでいく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最初に、ランダムグラフ上のBM格子ガラスモデルにおける位相空間分割転移の研究について、その結果を論文として発表することができた。また、BM格子ガラスモデルに対し、非平衡状態における外場への応答を測定するためのプログラム作成に成功した。これにより、同モデルにおける位相空間分割転移と非平衡ダイナミクスの関係を明らかにするための土台が揃った。また、このプログラムはイベントドリブン・モンテカルロ法で実装しているため、粒子配置の制約が厳しくなる低温・高密度領域になるほど高速に動作するという特徴を持ち、そのため実験に近い長時間領域を調べることが可能である。そのため申請者は、現在までの達成度をこのように判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、ランダムグラフ上のBM格子ガラスモデルにおける、非平衡ダイナミクスの研究を中心に行う。この研究は最近着手したものであり、これまでのところ磁場中冷却磁化に対応する測定を中心に行ってきた。しかし、スピングラス等のスローダイナミクスを示す系では、非平衡ダイナミクスの研究はこれまでに活発に行われており、温度の変化のさせ方や外場の印加の仕方が異なる様々な方法で実験が行われている。本年度はこれらの多種多様な実験に対応するシミュレーションを行い、実験結果との類似点・相違点を明らかにしていく。また、この研究を通して、位相空間分割転移が非平衡ダイナミクスに与える影響についても明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
上述の実支出額で当該年度に必要な経費を十分に賄うことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に購入予定のパソコンパーツの購入に充てる。
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