2016 Fiscal Year Research-status Report
量子スピン液体から生まれる新奇な磁気秩序の理論的研究
Project/Area Number |
25400389
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
飛田 和男 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (20133704)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ダイヤモンド鎖 / フラストレーション / スピン梯子 / 部分フェリ磁性 / 非線形シグマ模型 / 熱的純粋量子状態法 / インコメンシュレート / 並進対称性の自発的破れ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)福井大学の菊池らにより、スピン1の歪んだダイヤモンド鎖の物質の実験的研究が進み始めている。これを機会に、まず、スピン1の歪みのないダイヤモンド鎖の全パラメータ領域での基底状態の相図を厳密解に基づいて完成した。特に、スピン1/2の場合と異なり、自発的に並進対称性の破れたフェリ磁性相が存在することがわかった。また、相境界の厳密な上界・下界を与えることができた。現在、種々のタイプの格子歪みの効果も考察しつつある。特に、歪みがなくても存在するフェリ磁性相に加え、歪みによって始めて生じるフェリ磁性相があることがわかった。この2つに本質的な違いがあるかどうかは次年度の研究課題のひとつとしたい。(豊田工業大学、高野健一教授との共同研究) 2)強磁性脚・反強磁性脚・反強磁性桁を持つスピン1/2梯子ハイゼンベルグモデルの基底状態において、Lieb-Mattisフェリ磁性相、部分フェリ磁性相、非磁性相が現れることを数値対角化により示した。また、部分フェリ磁性が起きる機構を非線形シグマ模型への変換や強結合極限からの摂動展開を用いて解析的に調べ、相図の大域的な構造や臨界指数について数値計算と整合する結果を得た。基底状態がインコメンシュレートな準長距離スピン相関を持ち、自発磁化のある朝永・ラティンジャー液体と見なせることも示した。 さらに、これらの基底状態の違いが有限温度の性質にどのように反映されるかを熱的純粋状態法により調べた。特に、部分フェリ磁性相でも強磁性相と同様、有限温度では、帯磁率が温度の2乗に反比例することを示唆する結果が得られ、その物理的機構を考察した。(本学M2関口和孝との共同研究)
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の予定になかったスピン1のダイヤモンド鎖の実験研究が始まったことを受け、この系の研究を開始した。基底状態の多様性という意味ではこれまでに研究した混合スピンダイヤモンド鎖よりさらに広い多様性を持つことが明らかになった。また、強磁性脚・反強磁性脚・反強磁性桁を持つスピン1/2梯子ハイゼンベルグモデルの研究の中では、当初の計画になかった新しい数値的手法として熱的純粋状態法を導入した。この方法は汎用性があり、これまでに研究した他の系に対しても適用してさらに理解を深めることができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)スピン1のダイヤモンド鎖について格子歪みの効果を詳しく調べる。特に、歪みがなくても存在するフェリ磁性相と歪みがあって始めて現れるフェリ磁性相の間に本質的な違いがあるのかどうかを明らかにしたい。 2)本研究計画の中で以前取り扱ったフラストレートしたスピン1/2の強磁性反強磁性交替鎖の逐次トポロジカル相転移が有限温度の振る舞いにどう反映するかを熱的純粋状態法を用いて調べる。また、このモデルは強磁性・非磁性相境界で厳密に基底状態が求められる点に特徴があるが、そのような厳密解のないモデルに拡張した場合、上記の逐次トポロジカル転移がどのように変わるかも明らかにしたい。
|
Causes of Carryover |
学会に学生の参加できる日が短かったため、学生の旅費が少なくてすんだ。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度なので、研究の遂行のために必要な備品は揃っているので、主にこれらのための周辺機器、消耗品、討論のための謝金、成果公表のための出張旅費が中心になる。
|
Research Products
(5 results)