2013 Fiscal Year Research-status Report
格子自由度による実効的長距離力による新奇秩序形態の研究
Project/Area Number |
25400391
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮下 精二 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10143372)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 貴司 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00647761)
西野 正理 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, 主幹研究員 (80391217)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スピンクロスオーバー / 相転移 / 秩序形成 / 弾性相互作用 / 長距離力 |
Research Abstract |
現在完成しているプログラムを用いて長距離力と短距離力の共存状態での相転移、秩序形態の研究を行った。これまで短距離力が強磁性の場合について報告していたが、25年度は短距離力が反強磁性の場合を詳しく調べ、短距離力が強磁性、反強磁性全域での相図を求めた。また、反強磁性短距離力場合、強磁性の場合と違い臨界現象が平均場的なものにならないことを明らかにした。これらの成果はPhys. Rev. B誌に発表した。また、ダイナミクスにおける長距離相互作用の効果についても研究を進める。これまで、連続極限でのスピノーダル現象などの閾値問題に関して、マクロなサイズの核形成のコンセプトを提案してきたが、格子変形による弾性効果に起因する圧力分布などについても詳しく調べ、Phys. Rev. B誌に発表した。さらに、スピン状態の双安定な電子状態自由度の更新と、格子変形のタイムスケールの違いによる秩序ダイナミクスの違いにより、ドメイン壁の伝搬に定性的な違いが生じることを発見した。ドメイン壁における格子変形は弾性相互作用のため、マクロな形状、つまりドメインの幅が系のサイズに比例するが、スピン自由度のドメイン壁はスピン自由度の変化のタイムスケールによることを発見した。これに関してもPhys. Rev. B誌掲載した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
前項で示したように、計画にあげた内容はほぼ達成した。それに加えて、さらに、格子の形状が三角格子やANNNI模型と呼ばれる場合には、反強磁性短距離力はいわゆるフラストレーションを持ち、興味深い相転移をすると考えられる。これらの場合の特徴を調べ、対応する実験を行っているグループと共同研究を進めることができた。さらに、実効的長距離相互作用のために、通常の熱平衡基本的な前提である示量性や相加性がどのようになるかという統計力学の基本的な問題についても研究を進め、Phys. Rev. Lett.誌に発表した。そのように、相転移研究の新しい展開に進むことができた。ただし、それに関する論文発表は順調に進めているが、海外での研究発表や、海外からの研究者の招聘による研究連絡などは執行が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
格子変形は相転移の様相に新しい特徴を与える重要な要素であるが、これまで主に二次元格子で考えてきた。三次元では、二次元の場合と異なる多くの新しい特徴があると考えられるが、まだ、未知である。そのため、大規模なパラレル化と、粒子の位置の連続変形での状態更新のための新しいアルゴリズムの導入したプログラムを作成する。また、運動は格子の運動とスピンの運動の2つからなる。格子変形の自由度は運動方程式に従うものであり、スピン状態更新は双安定状態間の離散的な変化であるため、モンテカルロ法と分子動力学の組み合わせたハイブリッド型プログラムを作成して、研究を進めているが、その計算物理学的な改善を加え、核形成、ドメイン壁の構造や伝搬の機構、ストレスバランスの形状記憶機構、さらには、亀裂発生についても研究を進める。弾性相互作用による実効的な長距離相互作用のため現れる諸現象として、これまで平均場的な振る舞いをあげてきたが、平均場と短距離系の境界付近では特異な秩序形態が現れることも明らかにしてきているので、スピンクロスオーバー系で対応する現象の発見に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究自身は順調に進んでいるが、想定していた、外国人研究者の訪問の計画や、海外での研究調査の予定が遅れた。さらに、それに伴い国内での研究連絡にもの遅れが生じた。 26年度に外国人研究者の訪問の計画や、海外での研究調査を重点的に進める。
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