2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400397
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
永尾 太郎 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (10263196)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ランダム行列 / 複雑ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
インターネットや人間関係などのつながり方を記述するとされている複雑ネットワークにおいては、次数(1つの頂点に直接につながる辺の数)がべき分布する性質(スケールフリー性)が見出されることが知られている。スケールフリー性をもつネットワークの辺が向きづけられている(辺上に矢印をもつ)場合について、複雑ネットワークの数理モデルを構成し、その隣接行列について、固有パラメータ分布の漸近的な振る舞いを評価する研究を進めている。辺が向きづけられていることから、隣接行列は一般には非対称行列となり、その固有値は複素平面上に2次元分布するのに対し、その特異値は実軸上に1次元分布する。特に、内向き次数(内向きに入る矢印の数)と外向き次数(外向きに出る矢印の数)の大きさによる頂点の順序づけが、それらの固有パラメータの分布にどのように関係するのかに注目している。今年度は、数値的手法により、頂点の順序づけをランダムに行うとき、隣接行列の固有値が複素平面上にどのように分布するかを調べた。また、ネットワークの辺が向きづけられている場合と向きづけられていない場合を連続的につなぐモデルについて、場の理論的手法(レプリカ法)により、隣接行列の特異値分布を評価し、頂点の順序づけとの関係を研究した。ネットワークの辺が向きづけられている場合と向きづけられていない場合を連続的につなぐモデルの隣接行列は、非エルミート行列とエルミート行列を連続的につなぐ数理モデルの例になっている。そのような数理モデルのうち代表的なランダム行列モデルについては、複素平面上で直交する多項式の性質を利用することにより解析できることが知られている。これらのランダム行列モデルを拡張して、複素平面上の直交多項式の理論に関連づけることにより、新しい普遍的な振る舞いを見出したいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
向きづけられた辺をもつ複雑ネットワークの隣接行列について、その固有パラメータ分布への理解が深まっているとともに、非エルミートランダム行列に関係する数理モデルの研究も進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
複雑ネットワークの隣接行列および非エルミートランダム行列に関係する数理モデルについての研究成果を、学会発表などを通じて精緻化したい。
|
Causes of Carryover |
(理由)旅費の支出額が予想を下回ったため。 (使用計画)次年度の旅費の一部として使用する計画である。
|
Research Products
(2 results)