2014 Fiscal Year Research-status Report
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25400398
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Research Institution | Aichi University of Education |
Principal Investigator |
矢崎 太一 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (20144181)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | Thermoacoustics / Sound Synchronization / Amplitude Death / Sound Intensity / Bifurcation / Nonlinear Acoustics / Sound Source / Heat Engine |
Outline of Annual Research Achievements |
複数の振動子間で発生する同期現象は微視的分野から巨視的分野まで、物理分野に限らず様々な分野で観測される普遍的現象である。研究の目的は「熱音響振動系」で観測される同期への分岐図と、同期振動を維持している音源(Energy Source)を実験的に明らかにすることである。前年度は、気柱自励音波にスピーカーで周期的外力を加え「強制同期現象」の分岐と音源を明らかにした。結果的に、スピーカーからの周期的外力が自励振動子の位相を引き込んでも、また外力が自励振動の振幅を抑制したとしても、同期現象を維持している音源は外力ではなく自励振動子の音源である温度勾配にあることが実験的に明らかになった。 今年度の目的は、定在波型熱音響振動子間の「相互同期」の実現と、同期に至る分岐図を作成し振動抑制(消音)の新しい手法を提案することである。2つの熱音響気柱自励振動子を散逸結合することによって「相互同期現象」が実現され分岐図が実験的に作成された。実験で得られた分岐図が、散逸的に結合されたCoupled van der Pol Equationで数値的に得られた分岐図と比較された。熱音響系で発生する同期への分岐がvan der Pol系と同じ分岐を示すことが実験で明らかになった。さらに、散逸的に結合された2つの熱音響振動子を細管を利用して、ある一定の時間遅れで再結合し分岐図を調べた。散逸的結合で得られる振動抑制領域に比較して、振動数の差がない領域を含めた広い範囲で振動抑制(Amplitude Death)が可能であることが分かった。大振幅気柱自励振動をニードルバルブや細管のような単純なデバイスで結合し振動抑制ができるのは非常に意義深い。近い将来、ガスタービンエンジンなどの内燃機関燃焼系で発生する気柱振動の新たな抑制方法として利用される可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の主たる目的は、同期振動を維持している音源(Energy Source)を明らかにすることだった。LDVによる流速測定と圧力を同時計測することによって音響強度を決定し、その結果から音源を特定するのが目的である。 前年度、レーザー管交換(計画では平成26年度に要望)のための科研費前倒し請求が認められたため、今年度の計画の殆どが前年度中に実施され、その成果は日本物理学会誌に出版された。 前年度レーザー管交換したにもかかわらず、平成26年5月ころレーザーが発振しなくなり修理が必要となった。レーザー管ではなく電源に問題があることが判明したのは同年8月頃であった。科研費の主目的であるLDVを用いた「音源」の実験が前年度に思ったより早く進み、すでに論文掲載に至っていたため、予算的に難しい電源の購入を避け、平成26年度の研究目的でもある「相互同期現象」の研究に着手した。他大学との連携もあって、本年度中に本研究目的がほぼ達成され、それらの成果はすでに米国物理学会誌に掲載された。レーザー故障にもかかわらず、本年度の研究が計画通り実施され期待通りの成果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究計画書」に記したように、本研究の目的は:①音響強度場の測定から,同期振動を維持するためのエネルギー源(音源)を探索する ② 強制・相互同期およびカオス-カオス同期を実現し,分岐図作成と音源との関連性を解明 ③音響強度場の測定から,同期振動を利用した振動音抑制(消音)の方法を提案する、の3点である。2年間で研究目的のほとんど(80%)が達成され、すでに4編の論文として掲載されている。 しかし、「カオス-カオス同期」の実現については本研究発足後、他の研究グループから「観測された」との報告(論文はまだ出版されていない)があり、本研究では未着手の状態である。平成27年度(最終年度)は研究計画書の通り本研究の成果を広く発信していくとともに、研究会で示唆のあった「熱的に励起される気柱自励振動の安定性について熱力学的な側面(エントロピー生成)」から研究成果を見直すことも課題の一つとして研究を進める予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年度前半に、前年度と同様にLDVの光源であるアルゴンイオンレーザーが発振しなくなった。原因は前年度交換したレーザー管ではなく電源だった。予算的問題もありエネルギー流束はLDVによる光学的な手法ではなく圧力センサーによる "Two Sensors Method"を利用することにした。そのため予定されていた他大学への出張や学会への出席ができなくなった。また計算機使用も必要なくなった。これらの事由により旅費およびその他の経費に余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の直接経費および平成26年度余剰額は以下の通り使用する予定です:① 物品費(PCおよびネットワーク周辺機器およびソフト等)、② 旅費(学会・研究会での成果発表・資料収集等)、③ 謝金(研究補助等)、④その他(資料コピー等)。
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Research Products
(5 results)