2015 Fiscal Year Research-status Report
ハミルトン力学系における動的境界と量子効果に関する研究
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25400405
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
首藤 啓 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (60206258)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子カオス / カオス的トンネル効果 / 複素半古典論 / ハミルトン系 / 混合位相空間 / 非線形共鳴 / ストークス現象 / インスタントン |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,混同位相空間における動的障壁についての以下の点を明らかにした. (1) 「共鳴によって促進されるトンネル効果(Resonance-assisted tunneling 以下RATと略称)」の妥当性に関する詳細な検討を行った.一昨年度ならびに昨年度より,我々は,従来から非可積分系におけるトンネル確率増大の有力な機構として提案されたRATの妥当性について検討を重ねてきた.27年度は,具体的にRATの手法を実行してみることで,RATが想定する機構が非可積分系のトンネル機構として本質的か否かを調べた.その結果,繰り込み摂動基底に現れる,非自明なトンネル結合を再現することができないこと,および,セパラトリッスを越えた結合をRATが記述できないことの2点において,RATの方法は非可積分系のトンネル過程の実態とは大きくずれているものであることが明らかになった.この結果は,確立されつつあると見られていた,非可積分系のトンネル確率増大の起源についての定説を根底から覆すものであり,今後の研究の転回点になるものと考えられる. (2) Baker-Hausdorff-Campell 展開より得られた可積分基底を初期条件とする時間発展により,非可積分系の固有関数のトンネルテールが再現されることを発見した.この結果は,従来より我々が開発してきた時間領域の半古典解析が,固有関数のトンネル効果の解析に適用可能であることを示唆するものであり,それにより,エネルギー領域におけるトンネル効果の理論の大きな進展が期待される. (3) 26年度に引き続き,完全可積分系,とくに,多項式標準ハミルトン系のトンネル効果を,複素半古典論にもとに調べた.多項式標準ハミルトン系の解のリーマン面を調べ,基本群の考え方を導入することにより,複素半古典論に寄与する可能性のある複素軌道の数を解析的な手法により明らかにした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において中心的なテーマである,非可積分系のトンネル機構については,平成27年度も前年度に引き続き大きな進展が見られ,研究計画を立てた当初の予想を遙かに上回る成果が上がりつつある.とくに,従来,RAT機構をもとに説明されてきたトンネル確率の異常増大現象が,我々が90年代より主張し続けてきたカオスをその起源にもつことが明らかになりつつあることは最大の成果と言える.RAT機構の無効性と我々の主張の正当性を主張する論文は現在準備中である.一方,前々年度,前年度に可能性が指摘された「半古典記述の破綻問題」については,回折カタストロフ理論などを参考にした地固めが着実に進みつつあるが,想定以上に微妙な問題があることがわかり,昨年度期待したほどは成果が得られはいない.
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Strategy for Future Research Activity |
非可積分系のトンネル機構について,すでに我々は時間領域における半古典論を確立し,その成果は世界的に認知されたものであるが,27年度に行われた研究により,その手法をエネルギー領域に適用する道が拓かれた.この方向での研究をさらに進めると同時に,繰り込み基底間の遷移確率計算時に発生する「半古典論の破綻問題」を考えることがきわめて重要である.また,エネルギー領域に関する研究は,これまで,摂動の十分弱い近可積分領域を中心に調べてきたが,カオス領域が比較的大きく広がった状況に関しても,前年度来明らかになった事実が当てはまるか否かを並行して検討する.最終的に,「非可積分系と可積分系とではそのトンネル効果にいかなる本質的に違いがあるか?」という,最も基本的にして,しかしながら未だ専門家の間ですら合意のない問題に明確な答えを提示する.
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは,研究代表者が平成25年度前半から体調を崩したため,前年度同様,予定していた海外出張ならびに国内出張を取りやめにしたことが大きい.平成27年度についても体調不良が続き,当初予定額を消化することができなかった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用計画としては,当初計画の計算サーバを購入することと,研究成果を,国際会議(現在招聘を受けているイスラエル)および国内会議(現在招聘を受けている京都大学数理解析研究所),さらには,ワシントン州立大学の混合位相空間における古典カオスを専門にする専門家を招聘することなどに当てることを計画している.
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Research Products
(20 results)
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[Presentation] Quantum mechanics in open systems2016
Author(s)
Hajime Yoshino, Yasutaka Hanada, Akira Shudo
Organizer
The Global Human Resource Program Bridging across Physics and Chemistry
Place of Presentation
Tokyo Metropolitan University
Year and Date
2016-01-29 – 2016-01-29
Int'l Joint Research
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