2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25400407
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
田崎 晴明 学習院大学, 理学部, 教授 (50207015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 彰則 有明工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80274512)
桂 法称 学習院大学, 理学部, 准教授 (80534594)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 数理物理 / 磁気秩序 / 冷却原子系 / ボース・ハバード模型 / ハバード模型 |
Research Abstract |
「連続空間での相互作用する多体電子系で強磁性の発現を証明する」という大きな目標に向けて、関連する量子多体系の問題を幅広く探求することを目指した研究計画の初年度だが、広がりをもった研究が進展し、一定以上の成果を挙げたと考えている。 特に、昨年度の桂と田崎の共同研究 (Phys. Rev. Lett. 110, 130405 (2013)) の延長である、田崎による f=1 ボース多体系における磁気秩序の理論は、これまで平均場近似が主流だった冷却原子系のモデルの解析に数理物理の立場から踏み込んだ重要な結果である。これは、強磁性ではないが、連続系での磁気秩序へのアプローチという意味では、本研究計画の最初の主たる成果と言っていいだろう。 また、電子系での強磁性については、田中がギャップのない複数バンドを持つハバード模型での解析を進めており、これは将来の連続系の解析への第一歩となると期待される。 桂は、量子多体系の解析の裾野を広げる方向で、ボソン系とフェルミオン系のエネルギーの比較、ボース・ハバード模型での朝永・ラッティンジャー液体相の解析などについて成果を挙げている。 また、今年度は、二次元の臨界現象や共形場理論の研究などで知られる Boltzmann 賞受賞者の J. Cardy を始め複数の海外研究者を招聘し、密接な研究交流を行なうことができた。これは、即座に論文発表や研究成果に結びつくわけではないが、長期的には、研究計画にとって大きなプラスの影響を与えるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「連続電子系での強磁性」という狭い意味での目標にかぎれば現段階での成果は限定的というべきだろう。しかし、そこから派生する種々の量子多体系の解析という観点からすると、当初の予想を超える広がりのある研究ができたと判断している。 特に、ボース多体系の研究が予想をうわまって進展した。これは、本研究計画の最初の重要な成果である。本研究計画の開始前の発表した桂と田崎の共同研究 (Phys. Rev. Lett. 110, 130405 (2013)) は、本研究計画についての構想を進めていく中で生まれたもので、われわれとしては、本研究計画の一部のように感じている。ここでは、f=1 ボース・ハバード模型の磁気構造についてのもっとも基本的な定理が示された。その定理に「中身」を入れるべく、f=1 ボース多体系ならではの磁気秩序についての研究を重ねた結果、田崎の冷却原子系の磁気秩序についての厳密な不等式が得られた。このように、広いクラスの量子多体系の秩序についての数理物理学的研究を展開することが、本研究計画の際だった特徴になると認識している。 ハバード模型、あるいは、連続空間での電子系の基底状態での磁気秩序についても、個々のメンバーで研究を進めており、定期的に情報交換と議論をおこなっている。連続空間での電子系での結果は未だ予備的な段階であり、今のところ論文や学会での発表は行なっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
数理物理学の研究で、研究の方向性を限定しすぎることは得策ではないので、今後も「連続電子系での強磁性」という大きな目標につながりうる量子多体系の研究を着実かつ精力的に進めていきたい。また、上でも述べたように、「連続空間の電子系での強磁性」という目標を追求した結果として、「連続空間のボース系の磁気秩序」についての特筆すべき成果が得られたことは重要な教訓だと考えたい。今後も、大きな目標はつねに意識しつつも、多体問題の広大な世界を柔軟に開拓していくという姿勢を保って本研究計画を推進していきたい。そのためにも、様々な問題を手がけている多くの実験家、理論家との交流を進めたい。 その一方で、地道で堅実な研究も進めていこうと考えている。具体的には、田中と田崎が以前に発表したハバード模型での金属強磁性の理論を発展させより簡潔なモデルを考案すること、連続電子系でのできるかぎり簡単な強磁性モデルの構築などについては、折に触れて議論を進めていく。これらのテーマについても、三人で密接に連絡を取り合いながら集中的に取り組む時期を作ることを計画している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ほぼ全額を計画通りに使用した。残額は少額である。 次年度以降で使用する。
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Research Products
(8 results)