2014 Fiscal Year Research-status Report
2次元重力ポテンシャル下の等質量3体8の字運動の研究
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25400408
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
尾崎 浩司 東海大学, 清水教養教育センター, 教授 (00407991)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 克己 東海大学, 清水教養教育センター, 准教授 (10297195)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 数理物理 / 力学 / 3体問題 / 等質量3体8の字運動 / 高精度数値初期条件 / 拡張された3接線定理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2次元重力ポテンシャル下で等質量3体8の字舞踏解への解析的アプローチの1つとして,3体のうち2体(質点1と2)の長さを1に規格化して,残り1体の位置で3体の位置関係を表現する技法を試した.2変数で等質量3体8の字運動の全エネルギーを表わす計画だったが,現時点では計算が完結していない. 前年度に得られた予想外の成果である拡張された3接線定理「重心が保存し,全角運動量がゼロでない空間的な3体運動において,3接線を任意の時刻に全角運動量に平行な平面に射影すると1点で交わる」は,一般質量の3体運動において成立するため,3体問題に対して新たな知見が得られたものと考えられる.新定理の証明と具体例を2014年7月にスペインのマドリードで開催されたアメリカ数理科学会,ならびに,11月に千葉で開催された天体力学N体力学研究会で発表した.発表内容は論文に仕上げ,天体力学N体力学のプロシーディングスへ投稿済みである.新定理は,3次元空間の3体周期運動の数値解の探索で威力を発揮すると期待される. 2003年に藤原,福田とともに研究したレムニスケート上の等質量3体運動では,3接線と3法線が,それぞれ1点で交わる.3接線の交点の軌跡はMathematicaのサポートにより,直角双曲線であることがわかる.研究分担者の松田は,3接線定理を複素化することで,直接の証明を行った.証明の概略は以下の通りである.複素トーラスから複素射影平面への正則写像が3接線の交点で,それは代数曲線である.3接線の交点の軌跡は直線と3点以上の交点を持つことがないので2次曲線と定まる.さらに,座標軸に関する対称性と2次曲線上の数点を調べると直角双曲線になることがわかる.同様の考察により,松田は3法線の軌跡の関数形も決定した.これらの成果は論文にまとめJournaln of Physics A誌に投稿中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3体のうち2体(質点1と2)の長さを1に規格化して,残り1体の位置で3体の位置関係を表現する技法で全エネルギーを評価すると,Newtonの万有引力ポテンシャルや強力ポテンシャルの場合,等質量3体8の字運動を記述するために最初に導入することになる3変数のうち1変数はS3対称性により消え,全エネルギーが2変数で表される.同じように2次元重力ポテンシャルで評価しているのだが,現時点では,どういうわけか3変数すべてが生き残ってしまっている.他のポテンシャルの場合と比べて,2次元重力ポテンシャルにおいてだけ1変数が消去されないのは,S3対称性が存在しないことを示し,不自然と考えられる.現在,計算の過程に誤りがないかどうかを含めて最初から計算をやり直している最中である.計算を完遂するには,もう少し時間が必要である. 一方で,複素平面上で等質量3体の連立運動方程式から8の字解を得る道筋は,いまだに見えない.現時点では,運動方程式の解を仮定し,そこから2次元重力ポテンシャルが出てくるかどうかを調べている.レムニスケート上の等質量3体舞踏解は,2次元重力ポテンシャルと斥力ポテンシャルの合成ポテンシャルへと行き着くので,本研究課題では斥力ポテンシャルが出て来ないような工夫ができればよいのだが,斥力ポテンシャルの壁は厚く,取り除くことはできていないのが現状である. 3接線定理は全角運動量がゼロであることを幾何学的に表現したものなので,仮定した解が全角運動量ゼロを与えない場合は,それが解ではないことを示すのに有用である,しかしながら,全角運動量がゼロである軌道(解)は,8の字軌道(解)以外にも無数にあり,3接線定理では等質量3体の軌道(解)を制限できない.上記の松田の手法は,解析解がわかっている場合には強い威力を発揮するが,解析解が得られていない現状で,課題を解決するための推進力になりうるかどうかは,はっきりしない.
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Strategy for Future Research Activity |
複素平面上で等質量3体の連立運動方程式の解を,k位の極をもつ解析函数と仮定する.たとえば,もしも解が1位の極を持つワイエルシュトラースのゼータ函数の線形結合であると仮定すると,加速度はワイエルシュトラースのぺー函数の1回微分の線形結合で表されることになる.一方で2次元重力ポテンシャルの空間微分はワイエルシュトラースのゼータやペー函数の線形結合で与えられるであろう.仮定した解が正しいものであれば,運動方程式がワイエルシュトラース函数の公式に帰着すると期待される.1よりも大きいk位の極をもつ場合はより複雑になるが,8の字解は周期解ゆえ,求めようとしている解は,2重周期函数であるワイエルシュトラースのペー函数やその微分と何らかの関係を持っていても不思議はない.楕円関数によるアプローチで解析解への道を拓きたい. 課題解決のヒントを握るレムニスケート上の等質量3体運動へも,松田は代数幾何学的アプローチをさらに推し進めている.複素射影平面において,直角双曲線上の1点からレムニスケートに接線を引くことを考えると,実は6個の接点があることがベズーの定理からわかる.すると3接線以外に残り3本の接線が背景に隠れていることになる.松田はヤコビの虚数変換を用いて,これを明示的に記述することが可能であることを示しており,この点について論文発表を予定している.そして,この現象がレムニスケートのみに特有なのか,あるいは,3体問題の8の字解が解析的なときに,なんらかの群による対称性によって生じるのかを解明することが,新たなる課題になると考えている.松田は,また,レムニスケートの場合には,なんらかの数論的な現象があると推定し,そこも数学的に構造を解明したいと述べている.
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Research Products
(1 results)