2013 Fiscal Year Research-status Report
無限エルゴード理論と大偏差解析による弱いカオス拡散の特性指数の決定
Project/Area Number |
25400411
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
相澤 洋二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70088855)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 非平衡・非線形物理学 / ハミルトン系カオス / 無限測度エルゴード性 / 大偏差特性 / 異常拡散 / アーノルド拡散 / 対数ワイブル則 / 1/fスペクトルゆらぎ |
Research Abstract |
本研究では,弱いカオスのもつ統計法則とその出現メカニズムの解明に挑戦するとともに,異常拡散の分類と特性指数の決定などを通して,無限測度エルゴード性の多様な側面を明らかにする.今回,以下のような結果を得ることが出来た. (1)弱いカオスであるオンオフ間欠性の,従来メカニズムとは異なる一次元力学系(無限峰写像)について考え,臨界状態近傍において冪指数-1の無限測度が観測されることを理論的に明らかにした.また,ラミナー継続時間分布は臨界状態において標準的な冪指数-3/2とは異なる指数が観測された(Nakagawa and Aizawa, 2014). (2)弱いカオスが現れるトーラス・カオス境界(淀み層)が,直線で棲み分けられるマッシュルームビリヤード系において,最外殻トーラス上の回転数を無理数に漸近させると,トーラス近傍の淀み層の面積は減少していき,カオスの海の中に新しいタイプの淀み層が形成されることを発見した(Tsugawa and Aizawa, 2014). (3)淀み層の遍在性に関連して,FPU非線形格子系でネコロシェフ定理と対数ワイブル則が多自由度に渡って成立することを確認した.ネコロシェフの安定指数bについては自由度Nに対してb=c/N+dの関係が得られ,自由度無限大でも特異的な安定性が残る可能性が示唆された.また,対数ワイブル指数は非線形結合度が弱くなるに連れて小さくなる傾向が見られた(Tamiya and Aizawa, 2014). (4)異常拡散については準周期駆動円写像を用いた.この系では,SNA発生直後では指数が2以上の対数拡散が,SNAがカオス化する直前では劣拡散が発生する.今回,劣拡散の指数αは,コンパス次元をd,位相鋭敏性分布の冪指数をμとしてα=d=2-μの関係があることを数値的に明らかにした(Takahashi and Aizawa, 2014).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在進歩している無限エルゴード理論に対して,新たな普遍則を数値計算と合わせて明確に導いたことは大きな成果でした。また,無限エルゴード性がカオス現象(分岐現象)の多くの局面で顔を出しており,とくに実験データの中でこれまで非エルゴード的と呼ばれていたものが,無限エルゴード論の中で再検討されるべきことを理論的に示したことは,統計物理学にとって大きな進歩と言えると思います。ハミルトン系のアーノルド拡散やSNAの測度(マルチフラクタル)にも,弱い異常拡散やスローダイナミクスなど無限測度系類似の現象を発見し,その統計力学的枠組みに必要なネコロシェフ定理の検証も確実に進めることが出来ました。さらに,ハミルトン系拡散やランダム力学系,熱伝導非平衡輸送現象などにおいても無限エルゴード性との関連を示唆する予備研究も始めることが出来ましたので当初の計画は順調に進んでいます。
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Strategy for Future Research Activity |
無限峰写像系の成果は,ランダム力学系やSNA系の大偏差特性や異常拡散および測度のマルチフラクタル特性量の決定が可能であることを示し,SNAの分岐現象とハミルトン系とのつながりも押さえることが出来ましたので,当初の計画にそって進めるとともに,若干対象とするモデル系もひろげて,確率微分方程式に出現する無限測度系との類似点も分類してゆくことを新たに計画に加えたい。具体的には次のテーマについて進めてゆく予定である。 (1)ランダム力学系及び確率微分方程式に出現する無限測度の解析と観測関数のクラスに依存する大偏差特性を決定するとともに,バーストの統計則を理論及びシミュレーションで整理する。 (2)非平衡下におけるハミルトン系の示すスローダイナミクス(FPU系熱伝導)に生じる異常拡散とアーノルド拡散のスペクトル及び大偏差特性のシミュレーション研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度のスロベニア(マリボル)への出張費に充てるため。 スロベニア(マリボル・2014/4/27~2014/6/10)の出張費(往復航空便費用)に充てる。
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Research Products
(17 results)