2015 Fiscal Year Research-status Report
無限エルゴード理論と大偏差解析による弱いカオス拡散の特性指数の決定
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25400411
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
相澤 洋二 早稲田大学, 理工学術院, 名誉教授 (70088855)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原山 卓久 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70247229)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非平衡・非線形物理学 / 非定常カオス / エルゴード性 / 大偏差特性 / 劣拡散 / 対数拡散 / Lyapunov解析 / 量子ビリヤード系 |
Outline of Annual Research Achievements |
強不安定系(双曲力学系)のカオス現象は、従来のエルゴード理論の枠組みでほぼ完全に理解される。しかし不安定性が弱い非双曲力学系に発生するカオス現象の理論はいまだに明らかにされておらず、実際の現象の分析手法も十分に確立していないのが現状である。本研究では、弱いカオスの分析手法と理論的な記述方法(エルゴード仮説や大偏差特性など)の探求を目標としている。特に今年度は、弱いカオス現象の発生が予想される具体的な物理モデルの探索に力を注ぎ、以下に述べる成果【1】~【4】を得た:【1】弱カオスを示すNonchaotic Strange Attractor;準周期外力系を解析し、マルチアフィン特性指数とq相関指数、拡散指数が互いに一定の関係にあることを示し、弱いカオスの発生過程の普遍則を明らかにした。【2】弱いカオスを内蔵するSwarm力学;多体運動には個体の強いカオス性と全体の弱いカオス運動が共存し、Swarmの特徴を生み出す。自己駆動モデル系を解析し、速度分布が拡張ワイブル分布に従い、また重心が正常拡散から弱い拡散へと移行する。これはSwarmの相転移機構の一つを示したもので興味深い成果であった。【3】波動乱流としての量子カオスの記述;弱いカオスに関して古典-量子対応はほとんど明らかにされていない。本研究ではビリアード系に対し、従来の光線ダイナミックスとは別の方法で波動方程式の短波長極限で光線モデルを表現することができ、これは開放系ビリヤードレーザーの技術的応用に向けて量子カオス研究を発展させる基礎を築いたもので今後の発展が期待できる。【4】地震統計則を統合する理論的試み;地震現象には多くの統計法則があるが、全てを統一的に説明する為のエルゴード仮説はまだ見つかっていない。今年度は「埋め込み方程式」を現象論的に導き統一理論を整理し、地震の弱カオスモデルへの理論的基盤を築くことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
弱い非定常カオス現象の具体的モデルの探求が必要と考えて、今年度の研究実績概要に述べたように、先の4つの具体的対象の解析を進め、ほぼそれを達成することができた。しかし、それらの成果を専門雑誌に論文出版する準備に時間が十分とれなかったが、論文作成のために研究期間の1年間の延長(平成28年)を認めていただき、現在順調に論文作成を進めております。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究実績概要で述べたように今年度は弱いカオス現象を示す興味深い4つの具体的な物理系(【1】-【4】)の解析に力を注いだ。現在、それぞれの課題についてほぼ数値計算を含めておおよその解析はほぼ達成できた状況ですので、専門雑誌への論文発表の準備に取り掛かっている。 本研究の最終年度(平成27年)に論文出版を完了する計画でありましたが、論文作成のために今しばらくの時間を要することが予想されましたので、先に研究期間の延長を申請し、1年間(平成28年)の事業期間延長を認めていただきました。平成28年度中に順次論文を発表してゆく計画で、現在は論文作成に鋭意取り組んでおり、作業は順調に進んでいます。
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Causes of Carryover |
研究成果を専門雑誌や学会で論文発表する予定で、その費用を平成27年度の予算額に入れていましたが、論文作成を平成27年度中に完了できなかった為、1年間(平成28年度)の研究期間の延長を認めていただきました。それにより投稿料などの論文発表の費用として、次年度の予算使用額が必要となりました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、3篇の論文を学会および専門誌に発表する計画を進めており、投稿料など、その費用として使用する予定です。
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Research Products
(7 results)